/ Restoration Ruins ( Vortex / 1968 )
こういうレコードを、いまいちジャズ・ファンもシンガー・ソングライター・ファンも理解してこなかったんではないかな、と思う1枚。ジャンルというものはある種の政治性を含んだモノでもあるし、とても難しい。ただ、どちらも痛快な批評性を持った音楽であるはずのジャズとロックのファンが交わらなかった、というのはとても不思議な気がする。
まあ、全ての音楽は等しくターンテーブルに載せられる、ってなレコード権宣言のなされた(?)昨今でこそ意義ある盤かも。
ジャズ・ピアニストとして高い評価を誇るキース・ジャレットの歌入りの自作自演盤。オリジナル・アルバムとしては2枚目。11(ボーカル、ギター、ブルースハープ、ピアノ、オルガン、ベース、ドラムス、タンバリン、ソプラノ・サックス、リコーダー、シストラ)全ての演奏を担当している。ピアノの音はほとんど聴かれず。ジャズ・ボーカルモノではなく、どちらかと言えば、フォーキーなシンガー・ソングライターものの風情なのが面白い。
ただ、1968年という時代性や世代性もあるにせよ、キースのフォーク気質というのは既に知られたところでもある。実弟のスコット・ジャレットはGRPから最高のフォーキーAOR作品をリリースしている(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20060621)。歌は弟の方が上手だ。
秀逸なのはラヴィン・スプーンフルのような”Sioux City Sue Now”や、切ないリコーダーと弦が入ったテリー・キャリアーみたいな”Fire and Rain”かな。ちなみに同じタイトルを持つジェイムス・テイラーの”Fire and Rain”がレコーディングされるのは1年後のことだ。