/ What You Feel Is How You Grow ( Roulette / 1972 )
ツイッターに移行してブログのほうは閉鎖しちゃう、なんて人も多い今日この頃。メディアとしては廃れる方向にあるけれど、栄枯盛衰が付き物の世界。音楽プロモーションの場として一世を風靡したmyspaceだって重すぎるって理由もあったけれど、最近はSoundCloudに移行してるみたいだし。ただ、改良されて便利になっている部分もあるけれど、盲目的に目新しいものに向かうよう仕向けられているようでバカバカしく思えたりもする。つねに「差」を見出す資本主義の営みを前進であり善と捉えるのは愚かなことなのかもしれない。個人的には情報の早さよりも深さを求めているから、ブログの方が伝わるメディアとも思える。
さて、中村とうよう氏衝撃の自死後、自身の創設したミュージックマガジン社から弔い本『中村とうようアンソロジー』が出ている。これは面白かった。音楽研究家である前に、一人の音楽ファンとしての歯に衣着せぬ物言いが痛快だった。思い立って家の本棚に合った『ロックが熱かった頃』とか色々著書を読んでいるけれど、ブレはない。ただ、"花・花"を好評価するとか、客観的に理解ができない部分もあって。しかし、サヴァイヴした者が勝利するという側面もあると思ったのは、ミュージック・マガジン追悼特集の「これがはっぴいえんどだったんじゃない」の、みたいな内田裕也談。この痛烈な皮肉に、かつて、はっぴいえんどをはじめとしたURCの日本語ロックに高得点を付けたニューミュージック・マガジン誌に、英語によるロックで殴りこみをしかけた内田がとうよう氏に抱いていた苛立ちの大きさを見た。
さて、今日聴いたLP、コレはポップ!A面1曲目の"Special Day"が抜群に良い。軽快なアクースティック・ギターのカッティングとエレクトリック・ギターの絡みやバランスも最高だし。女性のコーラスも入ってくるんだけれど、クレジットをよくよく見るとエリー・グリニッヂだし、どうなってるの?という感じ。ギターはフル・ムーンのバジー・フェイトンで、ニール・ラーセンの方もキーボードや裏ジャケの絵で多彩な才能を発揮している。次なるA-2"Song Of Wandering Aengus"ではオープン・チューニングのアコギがこれまた良い音を出してくる。2曲で好盤を確信。
彼ドン・クーパー。アコギ弾きながら、適度なファンキーさがあって、そこいら辺りが90年代にアクースティック・レア・グルーヴとして持て囃された。とりわけ『Bless The Children』でしょう。もうCDが出ているけれど、
リズムものばかりかと思うと"Sioux Line Train"にはジム・クロウチ風の叙情を覗かせて。とはいえ、アルゾばりにコンガとアコギで引っ張るリズムに管楽器が入ってくる"Blueberry Pickin'"(3様する編曲も面白い)みたいな曲がなんとも凄い!B面のポール・マッカートニーが作るみたいな弦の入ったアクースティック・バラード"Waltz Me'Round Again"も卒倒しそうだし。
プロデューサーはベースを弾いているトム・ダウンズ。デヴィッド・サンボーンも参加している。いや、それにしてもLPってやっぱ音良いっすね。笑っちゃうくらい。デジタルの良さも享受しつつ、アナログも楽しまないとね。そんな判断まで0か1のデジタル思考になったらつまらない。