/ 終わらない歌 ( ヒートウェーブ / 2000 )
歌心のある歌手ってのもそうそういないものだけれど、この人は太鼓判を押したいシンガー。男臭くて、人間味に溢れてて、ちょっぴり寂しがり屋で、諦めないまっすぐな意志があって。女性が惚れるのも判るけど、男にだって惚れさせてくれ、という。変な意味じゃないよ!
さて、思い出深いファーストアルバムを。坂本兄弟が在籍していたバンド、Jigger’s Son解散後にリリースされたモノ。なんといっても日本経済が不況の2文字に覆われていく当時、「路上」ってのが一つのキーワードになっていて。私も相当やりましたよ、路上で深夜まで歌い続けてさ、なんだったんだろうといまだに思うけれど、地べたから見た地球はとてつもなくでかかった。
それで、”天使達の歌”がヒットしましたね。そのシングル盤には路上演奏のテイクが入っていて、ハッキリ言って最悪の音質なんだけど、FG-250っていうこれまたやっすいギターから吐き出されるうたのメッセージと音圧は心を鷲づかみにしてくれた。世の中に溢れてるつまんない歌なんか吹っ飛ぶよ。
で、この夏坂本さんのフリー・ライブを見に行ったら、“路上っぽくやってみようか”なんて言って、マイクを外して歌ってくれましたよ!あの”天使達の歌”を。
歩いても 走っても
休んでも ときどき戻ってもいいから
遠回りしても 迷っても
けがれても汚してしまってもいいから
どうかその旅をやめないで
自分の心の中を覗いてみたら、今も旅は終わってなかったってそんな気がしました。
さて、このファーストだけれど、武川雅寛のヴァイオリンがエキゾチックな彩りを放つ”Yellow”や名曲”愛の言葉”を収録。アクースティックな側面が時代とリンクしたわけだけど、本質はロックかな。ソロでもJigger’s Son時代でも、坂本サトル自身の魂が歌を作らせているからか余り変わらない質感だ。
小田和正がプロデュースを行ってシングル”ドライヴ”、”木蘭の涙”(スターダスト・レビューのカバーで小田自身の自演もある)はベスト盤『Singles 1999-2006』に収録されている。いずれの曲も、ライブで見たいな、と思うはず。