/ Same ( A&M / 1972 )
彼ほど勘違いされた人もいないだろうなあと。Jim Carroll といって思い出すのはNYのビート詩人、パンク・ロッカーとして有名な彼だ。2009年に亡くなってしまったけれど。
さて、このJim Carrollは余りに情報が少なすぎる。この1枚を残して消えてしまった人だから。でも、Lee Sklar、Russ kunkel、Danny Kootch、Craig Doergeといった脂の乗り切った全盛期のThe SectionのメンバーにDavid Spinozzaが加わったとてつもない布陣。ジャケットがまたイイでしょう。右下にRichard Avedonの文字が。伝説的なフォトグラファーなだけに、時代の風化を拒否した存在感に圧倒される。本人の名前と同じくらい目立っているわけだし。
さて、音はアクースティックな質感を残しつつ、The Sectionの控えめなバッキングが花を添える。メロディや雰囲気はヤクが抜けきっていないというか、David Crosbyのたゆたうような音とも共通する楽曲がある。ブルージーな要素も強い。意外性はというと、突然ニューオーリンズになってあれれ、という”I’m in Love Again”(コレはFats Domino!)辺りかな。
達者なフィンガー・ピッキングが聴けるブルーズ”My Own Movie”ってのがあるが、自分の映画でスターになる!なんていうやさぐれ感は全編を支配している。ラストの”I Got Plenty”はBonni Raittがレコーディングしている。
一番好きなのは”On And On”。Stephen Bishopにもそういうヒット曲があるけれど、こちちらはJimのアコギのピッキングでぐいぐい進んでいく感じ。いつも同じ話ばかり聴かされ続ける男が堂々巡りに終始するのに疲れて…ってな曲。最後に無邪気なガールズ・コーラスが可愛く入るのが、なんとも言えない感触を残す。ストリングスに彩られた”Save Me”も忘れられない曲。
ところでプロデューサーのJoey Levineだが、バブルガム・ポップの雄、Ohio Expressのボーカル・ソングライターを務めていた人物だ。