/ Personal Belongings ( Vanguard / 1972 )
この盤は思い出深い。アメリカのSSWやフォークの世界にどっぷり浸かるきっかけになったような気もする。出会いは当時高円寺にあったフォークの中古LP専門店(今は通販オンリーかな)。店主は、CD化されているかどうかなんてどこ吹く風で値付けをしていて、ちょっと高めかな、と思う所もあったけれど、オリジナル盤へのこだわりもあって、好感を持っていた。ベアフット・ジェリーなんかもココで初めて聴かせてもらって。度肝を抜かれたのを思い出す。
さて当時、B.J.トーマスのシェプターのオリジナル盤とか、バリー・マンだとか、割とポップなものを探しに出かけたはずなんだけど、そんなのよりコレがいいよと取り出してきたのがデイヴ・ロギンスのヴァンガードからのデビュー盤。針を落とすとしっとりとしたアコギの音色と共に震えるようなボーカルが載ってくる。M-1”Good Side Of Tomorrow”。切ないメロのサビでもう失禁しそうになった。さらにバリー・マンが好きなら、と聴かせてくれたのがM-2”Pieces Of April”。ピアノの質感といい、確かに名盤『Lay It All Out』を思わせる雰囲気。まだスリー・ドッグ・ナイトへの提供曲だなんてことも知らなくて。“君と出会った4月のかけらが残されているよ 今はある5月の朝…”なんて歌詞、今聴くて青春の五月病、ってな感じだけど、なんて繊細な感性を持った歌い手なんだろうと素直に感動してしまった。ケニー・ロギンスのいとこだと知るのもその後のことだ。デヴィッド・ブリッグスやノバート・パットナム、チャーリー・マッコイ、ジェリー・クラッチフォードらがサポートしている。
それ以後、彼のアルバムは以降エピックに移籍してからのヒット曲”Please Come To Boston”を収めた『Apprentice(In A Musical Workshop)』(1974)、『Country Suite』(1976)、『One Way Ticket To Paradise』 (1977)、”Pieces Of April”を再録した 『Dave Loggins』(1979)を入手して。いずれもポップ・カントリーの傑作だと思う。キャピトルで1984年に出したアン・マレーとのデュエット”Nobody Loves Me Like You Do”は久々のヒットとなった。キャリアを総括するにはRavenからのベスト盤『The Good Side Of Tomorrow 1971-1984』が適当だろう。
オリジナルアルバムは昨年CD化されたのだけれど、まあ買い直す必要はないかなと思っている。なんでもCD化すれば良いってもんでもないし、2枚買うのも最近ほとほと馬鹿らしくなってきている。レコードでいいじゃない。ボーナストラックをダシにしたCDを買い直すのはもう止めよう。CDに一切の関心を示さなかったあのレコード屋の店主を思い出しながら、このデイヴ・ロギンスのLPを聴いていたらそんな気分になった。