/ Crazy Love ( Reprise / 2009 )
毎作一応買っているマイケル・ブーブレ。今までどれをとっても、大方のプロデューサーを務めるデヴィッド・フォスターの目もあるだろうが、若くしてこの選曲は、と感心はするものの、ボーカルの青臭さがどうも許せない感じもしていた。それが本作、冒頭M-1”Cry Me A River”を聴いてやっとソコソコの風格が出てきたように思えたのはなぜだろう。
12曲中、デヴィッドは7曲、腹心のウンベルト・ガティカが2曲のプロデュースを担当。彼の音楽はジャズ・ボーカルと言う分類になるのかもしれないが、それよりポール・アンカのようなラスベガス歌手に仕立て上げようというデヴィッドの意図を感じる。それが証拠にポップス系のカバーを多く歌っているし。
そんなポップス系カバーの方が、より彼の青臭さを覆い隠すようで。ヴァン・モリスンの名曲を感傷的にカバーしたタイトル曲M-4”Crazy Love”は曲自体が元々優れていることもあるけれど、なかなかに良い仕上がり。ビリー・ヴェラの一発ヒットM-11”At This Moment”やイーグルスのM-8”Heartache Tonight”も意外な選曲だった。ラストM-13は作者ロン・セクスミスと共演する”Whatever It Takes”。コレもボッサ・タッチの趣味の良い音。
さらにさらに、マイケル自身がソングライティングに加わったM-5”Haven’t Met You Yet”(作詩にデヴィッド・フォスターの娘エイミーも加わっている)は素晴らしかった。一番ヒット性の高い楽曲と言える。スウィンギーでゴージャスなM-6”All I Do Is Dream Of You”を次に持ってくるという新旧折り混ぜたサウンド・メイキングも聴き手を飽きさせない。
naturally 7を含めたノスタルジックなM-12”Stardust”や同じくホーギー・カーマイケル作のM-3”Georgia On My Mind”もなかなか。ホーギーみたいな薄味のジャズ・ソングはマイケルに合っている。曲がオーソドックスなジャズM-2”All Of Me”にはアレンジにクインシー・ジョーンズの名も見えた。ジャズ・ファンには食い足りないだろうけれど、良いブレーンが付いてくれた氷川きよしのようで、悪い存在ではない。