いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Bryan Adams / Tracks Of My Tears ( Bad Records / 2014 )

markrock2014-12-13


もう12月半ばですか!早いとしかいいようがないです。ジョン・レノンの命日も過ぎ。唐突にブライアン・アダムスの新譜を。ブライアン・アダムス、大好きだった。最近聴いていなかったけれど。10年くらい前に武道館来日公演も行きました。当時もはや若くはなかったはずなのだが、白い「つなぎ」で登場しましてね。トリオ編成のロックバンドだったかな。シンプルなロックンロールのすごみを感じられて感動したのを覚えている。



70年代ブリティッシュ・ロックを思わせるスタイリッシュなジャケ写(ヴァンクーバー時代の16歳のブライアン本人!)がいいでしょ。写真集のようなブックレットを開くと、スリーブ付きのシングル盤で楽曲が紹介されていて、センスが良い。Capitol、Dot、CBS…とか、アナログ好きがニヤリとするような色んなレーベルを模したデザインになっていて、見ているだけで楽しい。あの時代、への鎮魂みたいな雰囲気も感じつつ。11曲で本編が終わるけれど、私の買った輸入盤だと5曲のアウトテイクのボーナスが付いていた(日本盤にはさらにもう1曲、エヴァリー・ブラザーズのカバーが入っている模様)。昨今のカバーものの流れを汲んでいて、ブライアンが影響を受けた楽曲を彼なりに料理した作品。「知らない曲があったらオリジナルを聴いて、僕の解釈を楽しんで欲しい」なんてブライアン自身のコメントがライナーにあった。AMラジオから流れる”Born To be Wild”(Steppenwolf)、”Killer Queen”(Queen)、”Mississippi Queen”(Mountain)…なーんて楽曲に胸躍らせる生粋のラジオ少年だったみたい。でも今回の選曲でディープ・パープル、レッド・ツェッペリンバッド・カンパニーアリス・クーパー…なんていうハード・ロック路線に走らなかったのはプロデューサーの判断があったみたい。そのプロデューサーというのが、同郷カナダ出身のデヴィッド・フォスターとブライアン自身(3曲はボブ・ロックとブライアン)。いやこりゃびっくりですね。デヴィッド・フォスター、最近ではボンボン息子の乱行が日本のバラエティ番組でも取り上げられるくらいのネタ提供セレブ化してますが、ちゃんと良い仕事をしていて。ソウルの名曲をキレイ目にカバーした2作+ライブが印象的だったシールとか、マイケル・ブーブレの諸作とも同様、安定したポピュラー・ボーカル盤としても聴けるかな。ちなみに最近、誰も買おうとしないような50〜60年代のゴージャスなポピュラー・ボーカル盤をせっせと集めているんだけれど、デヴィッドが目指してきた王道感ってのはこの辺りが念頭にあるのかもしれないなと思ったり。



こうして聴くとブライアンのしゃがれ声がやはり印象的で存在感がある。カバー盤を聴いていると誰のCDを聴いていたか忘れちゃうことが時としてあるけれど、そんなことはない。冒頭ビートルズの”Anytime At All”(これまたジャストな選曲で…)なんて往年のブライアン節の突っぱしるギター・ロックなアレンジで。



ジム・ヴァランスとの共作”She Knows Me”もブライアンらしい、フォーク・ロック風味の新曲。自身の楽曲はこんなミュージシャンの影響でできたものなんです、という証明かな。ドン・ギブソンというかレイ・チャールズ版が有名な”I Can’t Stop Loving You”、ディランの”Lay Lady Lay”、 CCRの”Down On The Corner”にチャック・ベリービートルズ)の”Rock And Roll Music”はバラード、ミディアム、ロックン・ロールというブライアン節の直球。さらにマンハッタンズの”Kiss And Say Goodbye”みたいな隠し球もあり。”The Tracks Of My Tears”は色んなカバーがあるけれど、個人的にもスモーキー・ロビンソンで一番好きな曲だから嬉しかった。本作のタイトルはこれをもじって『Tracks Of My Years』なんてのも気が利いている。そして、日本人にも受けたブライアンの歌謡性(ライナーには日本のファンとの近年の交流も記されていた)はボビー・ヘブの”Sunny”やアソシエイション”Never My Love”のカバーで理解できたような。いずれにせよ60年代ロックにどっぷり、なブライアン少年だったんでしょうな…



ラストはブライアン繋がり、か知りませんが”God Only Knows”を。基本デヴィッドのピアノ弾き語りで。グッと来ましたね…クリス・クリストオファスンやエディ・コクランジミー・クリフなどを取り上げたボーナスも、簡素なアンプラグド・セッションみたいな感じで聴き物。違和感なく収録された”You’ve Been A Friend To Me”は2009年リリース楽曲セルフ・カバー。



代表作『Reckless』の30周年記念デラックス・エディション4枚組なんてのも出ている。たぶん結構良いんだろうけれど、この類は最近消化不良を起こしそうになってしまう(実際今年入手したボックス系は飽和状態でとても聴ききれない!)。筋金入りのファンの方は必携かと。