/ 懐かしいくらし ( 徳間ジャパン / 1975 )
六文銭のメンバー、というだけで小室等の影に隠れているようなイメージもあるけれど、ミュージシャンにおさまりきらない程の才人だと感じている。とりわけ定評があるのは詩人としての側面。それが証拠に、築き上げた作詩家としてのキャリアも相当のものだ。けしてヒット・ソングのライターではないのだけれど。そう言えばかつて及川が、正真正銘のヒット・ソングのライターであった阿久悠に詩を依頼したことがあったけれど、阿久と及川という対照的とも思える二人の詩人に重なり合う部分はあったのだろうか。
さて、及川の名作というとファースト、セカンド、セルフカバー集『引き潮』などどれも捨てがたいのだが、シティ・ポップへの接近と言うことでは今回取り上げたサードが重要。なにしろ全曲の編曲・鍵盤を坂本龍一、ストリングス・ブラス・アレンジをすぎやまこういちが手がけ、演奏では寺尾次郎、上原ユカリ裕、徳武弘文、コーラスにシュガーベイブ(山下達郎、大貫妙子)という豪華な布陣が名を連ねているのだから。
なんといってもシュガー・ベイブそのものといってもおかしくないほどポップなM-4”海岸通り”が最高!フォークっぽい楽曲ながら、ファンキーに跳ねたタイトル曲M-2”懐かしいくらし”もなかなか。面影橋路線のM-8”さみだれ川”も趣味の良い和の感覚で。
ちなみに裏ジャケに山下達郎の自主盤『Add Some Music To Your Day』がさりげなく飾られている。