/ Same ( TUNETONES / 2010 )
イタリア語で”Two Voices”を意味するこの男女デュオ、昨年にリリースされたこの盤は80年代から90年代のアメリカを代表するヒットメイカー、ダイアン・ウォーレン曲集だ。ジョニー・マシスはじめ、ダイアン曲集はそれまでにもなくはなかったけれど、いまだかつてない秀逸な出来と言える。嫌みのない歌声で、スタンダードの風格。
何しろダイアン本人(監修)と、ダイアンの楽曲としばしば絡んでいたデイヴィッド・フォスターの腹心ウンベルト・ガティカ(プロデュース)が制作に加わっているのだから。アレンジも生音に壮大なオーケストレーションを被せたモノ。リズム隊にもネイザン・イーストやマイケル・トンプソン、ディーン・パークスといった腕利きセッションメンが参加。アレンジではベックの父でもある巨匠デヴィッド・キャンベルや、エルトン・ジョンの全盛期を支えたポール・バックマスターが手がけたモノもある。
殆どがハリウッドの恋愛映画のバックグラウンドにお似合いな楽曲ばかりで、かといって耳に優しくしっとりとした仕上がりにしているのが、現代の耳に合う。
“Unbreak My Heart”(トニ・ブラクストン)、”How Do I Live”、”Can’t Fight The Moonlight”(リアン・ライムス)、”Because You Loved Me”(セリーヌ・ディオン)、”I Don’t Want To Miss A Thing’”(エアロスミス)…誰でも知っているあの曲この曲に出会える。『アルマゲドン』の主題歌だった”I Don’t Want To Miss A Thing’”なんて、エアロの印象が強すぎてカバーする人もそうそういない曲だと思っていたけれど(TOTOのジョセフ・ウィリアムスが企画盤で取り上げていたか)、悪くはない。メロディだけを追うと、意外とカントリー歌手が歌いそうな曲だな、と思ったり。
ちなみに、グラミーに7回ノミネートされるほどの、これほどのヒットメイカーながら、ダイアン自身の自演は公式的には発表されていない。プロモーション目的で作られたデモ・ボックスで数曲が聴けるけれど、お世辞にも上手い歌ではなかった。歌えれば、自演盤を出しますわな。さらに言うと、未婚を貫く彼女はレズビアンであるらしく、そちらの方からの支持も相当ある模様。
メイキングなどを収めたDVD付もアマゾンだと1500円を切る値段だった。