/ At The Copa ( ABKCO / 1964 )
昨日も書いたけれど、BBC制作のドキュメンタリー“ソウル・ディープ”、BBCは流石だと唸る良い番組だった。昨日で6回分が完結した。グッと来たのは第2回「ゴスペルからソウルへ」。サム・クックが主人公で語られる話なのだが、不覚にも涙してしまった。本当に惜しいサムの死。サムの弟が「死んで40年経つけどまだ兄が恋しい」なんて言うのだから。
”You Send Me”でヒットを飛ばしたサムが公民権運動の高まるさなか、ディランの”風に吹かれて(Blowin’ In The Wind)”に出会ったシーンも良かった。サムは「これは私が書くべき曲だった」と言ったという。”風に吹かれて”冒頭の”How many roads must a man walk down , before you call him a man”って詩。”どれだけ道を歩いたら、一人前の男として認められるのか”なんて成長途上にある若者に共感されるような訳がなされているけど、それでは本意は伝わらない。黒人差別のまだ激しかった当時、家族を持って歳を重ねたとしても黒人は、白人から”Man”と呼ばれることはなかった。”Hey ,Kid”(おい、お前)と呼ばれてしまうという現実があったのだった。「どれだけ歩いたら”Man”と呼ばれるようになるのか」。黒人の気持ちを代弁する歌を白人青年が歌った事に衝撃を受けて、サムは後年代表曲とみなされる”A Change Is Gonna Come”を作る。この辺りはピーター・ギュラルニックの名著『Sweet Soul Music』にも記されている。この曲を聴かされたボビー・ウォーマックはサムに"不気味な曲だ"と感想を漏らしたという。果たしてその通り、サムはロサンゼルスの安モーテルで非業の死を遂げる。
さて、現在気軽に聴けるサムの”風に吹かれて(Blowin’ In The Wind)”を収録しているのは、コパでの名ライブ盤。ジャッキー・ウィルスンのコパ盤も好きだけど、サムのコパ盤は格別。ここでの選曲は白人層への受けを狙ったものだ。それでもスムースでハッピーな歌声の中に聴き取れるソウル、ブルーズを聴き逃すまいとしてしまうのは、余りにも感傷的だろうか。