チェンバース・ブラザーズというと1968年のヒット、”Time Has Come Today”のイメージ。サイケデリック・エラの空気を吸って、白人音楽であるロックと黒人音楽であるソウルをミクスチャーして。プロデュースはデヴィッド・ルービンソン。その時代、コロンビアから何作か出しているけれど、今の日本ではあまり人気がないのかな。オリジナル米盤、マトリクス初期でもたいてい1000円しないという印象。
その理由を考えてみると…当時の白人マーケットをターゲットにしていたグループだから、売れたものの、うるさ型のソウル・ファンはそこまで熱心に追いかけなかったのではないだろうか。そして白人ロックのファンは普段あまりソウルを聴かないから、宙ぶらりんになって。でも、この2枚組に入っているフィルモア・ライブ『Live at Bill Graham's Fillmore East』なんて、ジミヘンみたいでなかなか熱い。
とはいえ後年Avcoでアルバムを出していたことは、これを見つけるまで知らなかった。1973年の『Unbonded』。Avcoといえばスタイリスティックスでしょうか。甘ったるい白人向けのフィリー・ソウル。そちらも大好きだけれど、チェンバース・ブラザーズの方がガッツがある感じ。しかし選曲がえげつない。シュープリームスの”Reflections”やインプレッションズの”Gypsy Woman”はいいとして、ザ・バンドの”The Weight”、ビーチ・ボーイズの”Good Vibrations”、さらにはラヴィン・スプーンフルの”Do You Believe In Magic”まで演っている。しかも割と、オリジナルに忠実に。元々白人リスナーを意識してカバーの多いグループではあったけれど、ここまでやらせたたのは一体誰か、と思えばプロデュースはジミー・イエナー。やってくれますね。エリック・カルメンのラズベリーズやスリー・ドッグ・ナイト、そしてグランドファンクやベイ・シティ・ローラーズにも関わった彼でした。