/ Good Evening New York City ( HEAR MUSIC / 2009 )
今年最後はポールの新作ライブで。今年の音楽界。清志郎やマイケル・ジャクスンといったキングの死が、図らずもある種の時代の終わりを宣告する結果となってしまった。加藤和彦のこともあるけれど、こんな悲しく寂しい年もなかった。全然関係ない話だが、昨年は植草甚一の生誕100年のアニヴァーサリー・イヤーで、色々関連書籍なんかも出た。そんなことで今年、植草関連書籍を我ながら凄まじい勢いで集めてみたのだけれど、つまるところ彼の仕事は基本的にアメリカ文化のいろんな意味での翻訳。それが珍重され持て囃された時代が確かにあって。しかも、誰しもが憧れたアメリカ文化について、明治生まれの人間がこの国の誰より一番詳しいってんだから、こりゃ怪物そのものだったわけですよ。私も小学生の時にマイケルに憧れ、アメリカに憧れてきた世代だから、70年代の植草狂いの若者の気持ちは十分理解できる。でも、9.11以降アメリカという国の求心力が著しく低下し、今となっては「アメリカ」といっても一向に誰も振り向いてはくれない。つまり、偉大なる参照枠となり得なくなってしまっているという、そんなことを植草さんを追いかけて気付かされてしまったのだ。あの時代があったからマイケルはゴッドと成りえたというか、そんな側面もあったのではないだろうか。
まあ話は長くなりまして。で結局今年、ポップ界の2大巨頭だったマイケルとビートルズに尽きる年だったなあと。まあ彼らほど様々な世代に影響力を持ったミュージシャンは二人と居ないわけだから。
マイケルが版権を買って、なんて話もあったビートルズ。モノ・ボックスの狂騒にはじまりビートル・イヤーの体裁だった。関連作としてはクラウス・フォアマンの嬉しい復帰作もあったし。来年はリンゴの新譜が。ポールも上手いタイミングで出したもので。今年7月のライブ後すぐにこのライブ盤のリリース、ですよ。
初のスタジアムライブ、として知られるビートルズのシェア・スタジアム公演。その跡地に建てられたシティ・フィールド・スタジアムでの3夜の公演のベスト・テイク。CD2枚とDVDが付いた輸入盤を入手。ビートルズ時代の楽曲(”Paperback Writer”などは嬉しかった)を中心に、ウィングス・ソロ時代も網羅した飽きさせない選曲。流石に年齢による声の衰えはあるわけだけど、これだけ唄えりゃ文句はないですよ。むしろゲストで来たニューヨーク男、ビリー・ジョエル(”I Saw Her Standing There”を共演)の方が危ない感じだった。ビリーは”A Hard Day’s Night”なんかをライブ音源としてリリースしていたりというビートルズ・ファン。しかもビリーのファミリー・プロダクションから出たファースト『コールド・スプリング・ハーバー』にはポールの”Maybe I’m Amazed”を下敷きにしたような曲があったりもするし。
ポールはシャウトを酷使する楽曲ばかりを歌っておきながら、アンコール後に”Helter Skelter”を歌うという暴挙。飛ばしてますな。ジョンの”A Day In The Life”と”Give Peace A Chance”のメドレーもあった。ジョンに捧げた”Here Today”も感極まる感じで。歳を重ねてジョンとの日々が愛おしく思えてくるのだろうか。
ジョン・レノン・ミュージアム、存続させねばとの一心で新年も行って来るつもりです。
来年も当ブログを何卒宜しくお願いいたします。