*['60-'70 ロック] Ringo Starr / What’s My Name (Ume / 2019)
何気に順調なリリースを続けている御歳79になられたリンゴ・スター。2010年代に5作ですか。平均すると2年に1回のペース。出る度買ってますが、ほとんど金太郎飴状態、でも毎回買ってしまうという。リンゴのライブもそう。分かっているけれど行きたくなる感じ。ジャケもここの所ピースマークでワンパターンなんだけど、戦後70年余り経ってですね、安全保障のリアリズムで軍隊を持たなければなんて言う割に青白い若者も増えているっていう昨今だと、この愚直さに敬意を表したくなる。人間の愚かさは折り紙つきだけれど、平和だから音楽ができる、ということがビートルズ世代のメッセージなのだと信じたい。
ジョン・レノンの”Grow Old With Me”のカバーがやはりグッと来てしまう。復縁したヨーコと共に息子の成長を喜び、つかの間の幸せを得られたと思った矢先、ジョンはダコタ・アパート前で殺されてしまう。平和の使者が理由はなんであれ暴力に倒れてしまったということに心を寄せる基礎体力が、この世界にはまだあるのだろうか。ポール・マッカートニーがベースで友情参加し、ジョージの魂もストリングスのフレーズに忍ばせている。ビートルズ解散から50年が経とうとする頃に、こんな形で再結成のプレゼントが届くとは。
リンゴのオールスター・バンドとのロードが固い絆を育て、音楽的な距離を縮めていく。ジョー・ウォルシュが印象的なリフに加え、ボーカルも聴かせる”Gotta Get Up To Get Down”はイーグルスの”Life In The Fast Line”を思わせニヤっとさせられる(エドガー・ウィンターも参加)。自伝で憧れのビートル・リンゴとの共演をキラキラした言葉で熱っぽく語っていたスティーヴ・ルカサーとの共作はTOTO風味もあって面白い。ビートルズ時代にジョンが歌っていた”Money”のカバーも楽しいし、ゲイリー・バーやゲイリー・ニコルソンとの共作もリンゴの変わらないカントリー趣味を反映している(”Life Is Good”は良い曲だった)。そしてワン・ダイレクション、ウィーザーなどヒット連発のソングライター/プロデューサーのサム・ホランダーが手がけた”Better Days”は流石のポップな仕上がり。6曲でベースを弾くネイザン・イーストも良い仕事をしている。あ、もちろんドラムスは全編リンゴです。ライブだとシンガーに徹してる曲も多いんですが。ちなみにタイトル曲は元メン・アット・ワークのコリン・ヘイが手がけている。What’s My Nameって…知ってるよ!、ってゆー話ですが。
この手のものはアナログ!