/ A Sideman’s Journey ( Universal / 2009 )
ビートルズ・ファンは速攻で購入済みかと思いますが。豪華ゲストをフィーチャーしたクラウス・フォアマン初のソロ・アルバム。タイトルが全てを表しているけれど、表舞台に出ることはなかった人だけに貴重。クラウスと言えば、ハンブルク時代からビートルズの面々と交流があったドイツ人ベーシストでありデザイナー。有名な所ではジョン・レノンの“Imagine”でベースを弾いたり、かの『Revolver』や『Anthology』シリーズのジャケットを手がけたことでも知られる。今作もその『Revolver』風のモノクロ・コラージュ・ジャケで。
さて、レビューが遅れたのはボックスと通常CDでは曲数が違うと買ってから気付いたゆえ。だいいちボックスはビートルマニアの足元を見たむちゃな値を付けてますよ。DVD&ボーナストラックにクラウスのサインが付いているとは言え。しかし、はっきり言って欲しい!マア、DVDとかは実はどうでもよくて、唯一マンフレッズの音源(”Just Like A Woman”の再演)が欲しいんだけど。イナラ・ジョージやドン・ニックスの参加したボートラも、別にいいんです。ま、あきらめますが。
そう言えば、2年前の2007年にジョン・レノン・スーパーライブに行きまして。オノ・ヨーコと共にクラウスが登場して、”Bring It Home To Me”や”Imagine”を弾いてくれたのには感動したなぁ。清志郎を最後に拝んだ忘れられない日。
さて、まず、ポール&リンゴというリヴィング・ビートルが参加したファッツ・ドミノのM-1”I’m in Love Again”でスタート。ポールはピアノ・エレキ・アコギ・オルガン・ドラムスを多重録音。そこにクラウスのベースと、さらにリンゴのドラムスを足して厚みをつけたという。キーのせいもあるけれど、ポールはリンゴ並に声が低くなっているようにも感じられる。カール・パーキンスのA-2”Blue Suede Shoes”はドン・プレストンが歌う。アルバート・リーとジム・ケルトナーが参加。A-3”All Things Must Pass”はクラウスが参加したジョージの大作の言わずと知れたタイトル曲だけれど、ここではユセフ・イスラム(キャット・スティーブンス)が参加。「イスラム教に改宗し、芸名も変えて、ポップ・ミュージックの世界から遠ざかっている」といまだに書いている人がいるけれど、そんなことは無い。2006年に『An Other Cup』でポップ・フィールドに復帰。以前その盤のレビューにも書いたけれど(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20061208)、ネイティブ・アメリカン居住区のタオス(ニューメキシコ州)をかつて旅行したとき、急にキャットが聞きたくなって、街に唯一のミュージック・ショップでカセットを買い求めたことがあった。クラウスの本盤は、ヒッピー世代ならではというべきだが、同じくネイティブ・アメリカンのラコタ族の居住区の環境を守ろうというチャリティ盤の側面もある。そこにキャットが参加している事に個人的に何ともいえない符号を感じ取ってしまい。ちなみに同じくジョージのM-8”The Day The World Gets Around”もユセフが演っている。ユセフの今年出た新作『Roadsinger』も必聴。
ヴァン・ダイク・パークスがピアノで客演したランディ・ニューマン曲A-4”Have You Seen My Baby (Hold On)”に続くジョージのM-5”My Sweet Lord”はボニー・ブラムレットが演っていて。ベースはデヴィッド・フッド。本作屈指の好トラック。続くマンフレッズのセルフカバーM-6”Mighty Quinn”も堪らなく良くて。マンフレッド・マンのメンバーがマンフレッズ名義でライブを演っているのはファンに知られたところ。マイク・ダボ(Vo)、マイク・ハグ、トム・マクギネス、カール・カールトンが参加。クラウスだってこのバンドにかつて在籍していた。余り衰えを感じさせない。最近ソロの新作を出したポール・ジョーンズもコーラスに加わっている。かつて物議を醸したM-7”Short People”は再びご存知ランディ・ニューマン作。ドン・プレストンが歌っている。ヴァン・ダイク・パークスと共に、イーグルスのジョー・ウォルシュがギター参加。
M-9”So Far”はクラウスとドリス・トロイの共作で、ドリスがアップルから出した『Doris Troy』に入っていた曲。ここではボニー・ブラムレットが黒いノドを震わせる。クラウスが参加したリンゴ・スターの名作ソロ『Ringo』に入っていたポーマス・シューマン曲M-10”You’re Sixteen”はドイツ繋がりでEmpty TrashのMax Buskohlが参加。ラストはドクター・ジョンがいつものダミ声でM-11”Such A Night”を。こういった、ジャズ/R&B風味の小粋でオールドタイミーなバラードみたいのも、クラウスの好みなのかな。ジョン〜ニルスンな流れ。
一応限定版らしい本作。とは言え、ユニバーサル配給だし、シリアル・ナンバーが100万ケタなんだけど。