/ Same ( Polydor 2391 274 / 1977 )
“JAMES GRIFFIN - Member of ‘BREAD’”ってコピーのシールが貼ってあるけれど。デヴィッド・ゲイツ以上に個人名では印象が薄かったのかな。ま、あるいはそれ位ブレッドの冠に絶大が効果があったということも言える。ソロとしては3枚目のLP。西ドイツでのリリース。3枚目と言っても、1枚目はJimmy Griffin名義で1963年に出したティーン・ポップ盤。コレはコレで結構愛聴していたりもするんだけれど。で、日本で初のCD化を果たした”She Knows”を含む2枚目『Breakin’ Up Is Easy』(ブレッド以降初のソロ)があって、それに次ぐ3枚目がコレ。タイトルは単刀直入にジェイムスの名を冠してある。CD化の話は残念ながら実現しなかったらしく、いまだLPでしか聴けない。
『Breakin’ Up Is Easy』はビターでソウルフルなジェイムスの個性に焦点を当てた作。だから、ブレッド・ライクばかりを期待するとチョット肩透かしを食らう。まあ個人的にはジェイムスの全てが好きなので、大名作として太鼓判を押したい所だが。で、この3枚目はというと、ブレッドのイメージ通り、もっと言うとゲイツが作りそうなメロウ・フォーキーな楽曲を取り揃えてくれていて。聴き易さでは断然コッチじゃないかと思う。
と言うのも、ジェイムスとロブ・ロイヤーの共作が2曲(A-2”Hanalei”、A-4”Blood From A Stone”)、ロブの単独作B-2”That’s All I Need”も1曲含んでいるのだから、当然と言えば当然。中でもA-4”Blood From A Stone”はジェイムス、ロブ、ラリー・ネクテルが共同プロデュースし、マイク・ボッツが叩いているというブレッドのアウトテイク的作品。かなりロッキンな作り。ギターソロがスティルス風ってかはっぴいえんどみたいで。後年ジェイムスがセルフ・カバーするB-2”That’s All I Need”もゲイツがベースで参加していてその色。
あと注目すべきなのは、4曲を、後にTOTOを結成してLAの音楽シーンを書き換えることになるキーボーディストのデヴィッド・ペイチと大御所の父君マーティ・ペイチがプロデュースしている点。しかもデヴィッドは2曲を書き下ろし。TOTO以前に提供した楽曲は、グレン・キャンベルの”Houston”やシェールの”David’s Song”をはじめそう多くは無いから貴重。カントリーに片足を突っ込んだポップな音が新鮮で。まずA-1”Laula Lee”は驚くほどブレッド的、もっと言えばゲイツ的な優しいバラード。かなりの名曲。前にブログで紹介したこともあったが(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20060925)、ジェイムスがゲイツの楽曲を含めてアクースティックにカバーした『James Griffin Sings Bread Hits』ってのがあって。ゲイツ本人の歌かと思うほどの音域でメロウに歌いこなすジェイムズの喉に心底感動したクチなので、堪らない。もう1曲はB-1”Treat Her Right”。コレを聴いて思い出したのは、S.S.フールズの"Desert Dancin'"。TOTOの初代ボーカリストになるボビー・キンボールがTOTO以前に在籍していたスリー・ドッグ・ナイトの残党バンドに同年デヴィッドが提供した曲。ドゥービー風の豪快なアメリカン・ロックで。他にも、初期ビートルズ・ライクなB-3”My Love Is Mine”やソウル・バラード風B-4”I Respect”など、聴き所満載盤。