/ give us peace ( T-FORCE TFT-00-003 / 200?)
荻窪にあるライブバー「Bunga」。そのお店のオーナーをしておられるのが、シンガー・ソングライターのプー・カングァンさん。ひょんなことから知り合い、先日初めてライブを観に行った。
メッセージ性の高い、エネルギッシュなステージ、素晴らしかった!プーさんのエレアコにHiroshiさんがエレキで絡み、さらに透き通る歌声でminaさんがコーラスをつけるという。
個人的には、在日としての出自をリアルなブルーズとして歌い込んでいった新井英一にかつて魅せられた一人。だから、プーさんの美しいテナーが絶叫に変わっていった“アリラン峠を越えてゆけ”や、生野区のお婆さんを歌った“生野のハンマン”には、心の奥底から滲み出る感情をぶつけられたようで、何とも言えずグッと来るものがあった。
さて、こちらは当日手に入れた4曲入りのCD。プーさんの痛いくらいの情熱がほとばしるバラード“愛と勇気を”“お前の体の中で眠りたい”、スロウなブルーズ“人生”、平和を希求する美しいバラード“give us peace”。しかし、素直な反戦ソングの裏に潜む毒に気が付くか気が付かないかは、ライブを見れば解るかもしれない。簡単な言葉だけれど、”give us peace”に至るまでの道程は平坦なものではなかった筈なのだ。
終演後、今までの音楽的影響について尋ねてみると、拓郎、岡林から、ビートルズ、ビリー・ホリデイ、エディット・ピアフに至るまで、ジャンルに囚われない様々な音楽が血となり肉となっているとのこと。歌に篭められたメッセージについて指摘すると、“今の日本の音楽にはメッセージが無い”との厳しいお言葉も。コレは確かに。アメリカでは、60年代〜70年代にデビューしたミュージシャン達が、いまだにメッセージを歌に篭めようとしている。ジャクスン・ブラウンやニール・ヤング、ブルース・スプリングスティーンにしても。まあ、音楽全てにメッセージあれとは思わないし、恋愛の悲喜や感情の昂ぶりを歌にすることだけでも、何らかのメッセージを含むものだとは思っている。でも、これだけミュージック・ビジネスがシステマティックに動くようになって来て、ネタも出尽くす中で、ただただ売れる曲を作ろうっていう至上命題でやっていれば、そりゃ面白みの欠片も無い金太郎飴状態になりますわな。
森達也の名著『放送禁止歌』が炙り出したように、60年代〜70年代、自主規制の名のもと、表現の抑圧を強いられたミュージシャンは沢山居たはず。それが00年代にも入ると、事なかれ主義のレコード会社の方策に戦わんとする気概のあるミュージシャンなど故キヨシローくらいしかいなくなっていて。もう少しドキッとさせられる歌に出会いたいと思う今日この頃。歌の力を信じているだけに。
てなわけで。またライブに足を運んでみたいと思う。
夫 歌寛(プー カングァン)公式HP
http://www.poohkangwan.com/
ライブバー ブンガ
http://www.livebar-bunga.com/