/ Same ( Warner / 1971 )
ロニー・ミルサップのファースト。ロニーと言えば盲目のカントリー・シンガー。70年代半ばから80年代の人というイメージが個人的にあったため、デビュー作が1971年でしかもダン・ペンのプロデュースだなんて、CD化されるまで全く気が付かなかった。まあそのCD化も、話題になってから数年経ちましたが…
11曲のうち、6曲がメンフィスのアメリカン・レコーディング・スタジオ産。4曲はマッスル・ショールズ、1曲はナッシュビルのクアドロフォニック・サウンドにて。でも通して聴いてそんなに違和感は感じない。ダン・ペンらしい白と黒の交錯した音。でも、スワンプ限定のファンには食い足りないかもしれぬ。個人的にはカントリーにもソウルにも目が無いゆえ、むしろ安心して聴けるけど。
それでもファーストってこともあり、ロック的な青臭いアプローチも意外。チャック・ベリーのM-4”Sweet Little Rock And Roller”とか。ロッドも3年後にカバーしますね。ダン・ペン&スプーナー・オールダムのM-5”Blue Skies Of Montana”なんてのも後半はストリングス、ワウ、コーラスと入って混沌としたニュー・ソウルものを思わせる仕上がりだし。
でもそれより、正統派に佳曲多し。冒頭の、ピアノで聴かせるカントリー・ソウルなバラードM-1”Dedicated The Blues To Me”なんかもう最高!チビりそうになる。さらに、マーク・ジェイムス作のM-2”Sunday Rain”はマイナー調の名曲。ダイナミックで切ないサビは堪らない。エルヴィスが歌ってもヒットした気がする。クリス・クリストファースンのM-3”Please Don’t Tell Me How The Story Ends”は王道のカントリー・バラード。M-6”Sanctified”はジム・ディッキンスンとボブ・マクディールの共作で、ゴスペル・ライクなコーラスとポップなサビが光る。スプーナー&カレン・オールダム作のM-7”Keep On Smiling”はアクースティック・ギターにはじまるバラード。Aメロが『Lay It All Out』期のバリー・マンを思わせる。そしてそして、タイトルからは想像が付かなかったが、M-8”The Cat Was A Junkie”が70年代ポップ・ソウルの王道を行くような素晴らしい曲!
ロイ・オービスンのM-9”Crying”はしっかりとロイの声域をカバーしている。むせび泣くギターとシャウトに圧倒されたM-10”Not For The Love Of A Woman ”は“Light My Fire級”の盛り上がりと言ったら言い過ぎか。ゴスペル・シンガーのShirley Johnsonもカバーしている模様。ラストはストリングスの入ったミディアム・バラードで。
トニカク買って大正解!の巻。