いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Michael Jackson

markrock2009-06-28

/ The Ultimate Collection ( Epic E5K 92600 / 2004 )


キング・オブ・ポップマイケル・ジャクソンの死。これは音楽ファンとしてはスルーできない出来事。アメリカはもちろん日本でも追悼番組が急遽放送されたり、老若男女問わずマイケルの思い出や業績、そして死の真相について語り合ったりしていて。その全てがマイケルの音楽や生き方を最後まで、正確に伝えてくれているとは思えなかったけれど、そうした井戸端会議に花が咲く最後の大歌手と思うと一層悲しくて。個人的には『Thriller』アメリカ土産のカセットテープで聴き込み、『BAD』は小学生の時から歌マネしてたって言う洋楽の原点。モチロン、より詳しく音楽を聴くようになってからも楽しませてもらった。TOTO勢の参加(”Beat It”でエディ・ヴァン・ヘイレンの相方をルカサーが務めてる、だとか、”Human Nature”はスティーヴ・ポーカロの作なんて話ね…)なんかにも注目してみたり、あるいは”Thriller”はじめ代表曲を書き下ろしたロッド・テンパートンの在籍していたヒートウェイヴを聴いてみたり。”Man in the Mirror”がシーダ・ギャレットとグレン・バラードの作だと解った時もナルホドと思えた。クインシーものも色々漁ったし!


アメリカと言う国に翻弄された人だった気もする。人種差別を抱えていたアメリカで初めて、黒人にとっても、白人にとってもヒーローになった人物。ジャクソン・ファイヴがデビューしたのは公民権法成立後、でも、スターになってからも自らの肌の色を理由に嫌な思いをすることがあったはず。だからこそ、百万の富を手に入れてまずやったことが、整形手術だったわけで。


ポップ・ミュージックの歴史を考えると、同じく「キング」の称号を与えられたエルヴィスを思い出す。白と黒の狭間で音楽を作り、世代を超えた支持を得たこと、頂点に登りつめた者のみに知りうる不安と恐怖に苛まれた晩年、そして早すぎる死…なんだか重なるものが多いのだ。さらにはマイケルはエルヴィスの娘と結婚までしてしまったのだから!


さて、ジャクソン・ファイブ、ジャクソンズ、ソロ含めて持っている私でも十分楽しめたボックスがコレ。出たときもそれほど話題になった記憶がないけれど、1969年から2004年までに代表曲57曲を4枚に詰め込み、デンジャラス・ツアー時のブカレスト公演のDVD(未発表)も付けたという大盤振る舞い。もっともDVDはリージョン1なのが玉に瑕だけれど。それでもデモや初期ヴァージョンを含めた未発表曲12曲もあるし、満足の内容。


では未発表曲を中心に。やはり見逃せないのは、歌詞も含めて練られる前のDisc2-10”We Are The World”のデモ。後にベスト盤にも収録されたけれど、全編マイケルが歌う。その"We Are The World"でもトリを取ったジェイムス・イングラムが手がけたミディアムDisc2-6”P.Y.T. (Pretty Young Thing)”もなぜオクラだったのか、と思える楽曲。それほど全盛期の勢いが凄かった、と言うことか。Disc2-9”Scared Of The Moon(DEMO)”はハイトーンがさえる美しいバラード。


戻ってDisc-1ではジャクソンズのファンキーな大名盤『Destiny』に収録されたDisc1-11”Shake A Body ”のEARLY DEMOなんてのも。ピアノとリズムマシーンでビートを刻み、そこにギターが重なり…作曲の過程を垣間見る感じで。ファンキーと言えばこれまたDEMOのM-17”Sunset Driver”もなかなか。


Disc3の未発表曲で目ぼしい所と言えば、グレッグ・フィリンゲンズとマイケルの共作Disc3-7"Cheter (DEMO)"。コレは割とオーソドックスなリズム・アンド・ブルース。


R.Kelly作の名バラード”You Are Not Alone”に始まるDisc4。エイティーズのメインストリームの匂いがするR.Kellyとのコラボは大正解。”I Believe I Can Fly”で知られるお方。『Number 1』に収録された新曲”One More Chance”も同じくR.Kellyに頼んだものだった。ところで90年代から00年代にかけてのマイケル、アルバム『INVINSIBLE』は好楽曲を多く収めているにも関わらず、セールスが優れなかったのも理解できる。マイケルの声がバックトラックに埋没してしまっているようにも聴こえて。ヒップ・ホップを味方につけた妹ジャネットほど上手く時流に乗れなかったのかも。でも、消え入りそうな甘美なバラードDisc4-11”Beautiful Girl”は1998〜2004年にレコーディングされた未発表曲なのだけれど、スティーヴ・ポーカロやルカサーも参加して、元のマイケルの色。悪く言えば旧い音なんだけど。さらにDisc4-12”The Way You Love Me”も2000〜2004年録音の未発表曲なのだが、これも往年のマイケルらしいミディアム。それでも、まだこの線で行った方が良かったのではないか、とも思えた。マイケル、ロドニー・ジェンキンスと共にキャロル・ベイヤー・セイガーもクレジットに名を連ねた心揺さぶられるバラードDisc4-13”We’ve Had Enough”なんてのもある。コレがまた未発表と言うのが信じられない程の仕上がりで…。Disc4-6”Fall Again (DEMO)”も素晴らしい。マライアやセリーヌ・ディオンを手がけたウォルター・アファナシエフ作のラテンタッチのメランコリックな好バラード。ただし、マイケルの色が全く感じられないのが痛いけど。


マア、兎にも角にも、こうして彼の40年余りを辿っていくと、偉大な音楽家を失ったことに呆然とさせられるのだ。