/ Let There Be Love ( Decca / 2005 )
これは趣味の良い盤。エンゲルベルトと言うと、ポピュラー・ボーカルでも大甘の部類。個人的にはカナリ、ポピュラー・ボーカルものが好きなもので、色々集めてはいるのだが、エンゲルベルトはそこまでコレクションが進まない。ちょっと古臭いボーカルスタイルとワルツ調のカントリーバラードってな曲調がそうさせたのか。
しかししかし、往年のDeccaからのこの2005年盤は、当時69歳(今年で73歳!)でありながらにして、驚くほどに円熟したスムースな歌声を聴かせてくれる、良質盤。老いて逆に余り年齢を感じさせず、意外や意外。しかも、M-3”It Had Be You”はじめとしたオーソドックスなジャズを基本に置きつつ、同じテンションでポピュラーヒットを混ぜていくと言うスタイルが粋。かのロッドのシリーズにポップスが半分入っているかのような。ポール・アンカほど大袈裟なビッグバンドサウンドにしない辺りが、AORファンにもアピールする内容。M-2”Just The Two Of Us”も演っているし。
『ノッティング・ヒルの恋人』の主題歌M-4”When You Say Nothing At All”は名テイク。ニック・ロウのM-6”You Inspire Me”もスタンダードの風情でいい感じ。ささやくようなM-7”Stand By Me”に酔うと、M-9ではこれまたAOR世代のスタンダード、ボズの”We All Alone”が。ちょっと鼻にかかった感じがボズと似ているなと思ったり。そう言えばボズの方も最近はジャズにシフトしてきている。M-11”Dance With Me”はThe Orleansの名曲。ピアノとストリングスでしっとりと聴かせる。コノ曲、いつもABBA”Dancing Queen”に似ていると思う。
旧来のファンを納得させるM-12”Love Songs”も織り交ぜつつ、M-13はBryan Adamsの”Have You Ever Really Loved A Woman?”を。思い切った選曲が功を奏した。