/ ひっぴいえんど ( Columbia / 2009 )
しょっぱなからやってくれてるなあ、と言う。CSN&Y『Deja vu』のパロジャケで。でも江戸時代末期〜明治初期の写真にも見えてくるところがジャパニーズ・メイド。フォークル再結成以来の蜜月が続く加藤和彦・坂崎幸之助コンビによる2作目。2年前の1作目(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070917)では、長らく加藤さんの声が聴けなかっただけに、ミカバンドの新作に続く新譜が聴けて嬉しい気持ちと、加藤さんともあろうお方がそこまでせんでも、という気持ちとが入り混じっていた。正直。しかし今作、加藤和彦のアソビ心に降参。そもそも今は大御所と言われる彼だけれど、若かりし頃のフォークルの諸作や名盤『スーパー・ガス』なんかに聴ける屈託の無い諧謔精神や実験性を今再び取り戻したに過ぎないのかもな、とも思えて。
さて、本作、タイトルは奇しくも本家は発売中止になってしまった「はっぴいえんど」のタイトルをもじった曲目が面白い。でもサウンドはバッファローと言うよりCSN(&Y)。そして時々岡林+はっぴいえんど、という。そう言えば昨年の岡林ライブの客席でも二人の姿を見かけた。つまり本作は同世代の大滝詠一なんかと同じ方法論。全くCSNを知らない世代が聴いて(珍しいと思うけど)、ハマって、遡って聴いてくれたら面白い、という仕上がり。
しかしなんともアコギが良く録れている。その筋のファンも喜ぶはず。ディラン”Like A Rolling Stone”スタイルのM-1”ひっぴいえんど”でスタート。岡林・拓郎・泉谷・陽水の詩も織り込まれ。M-2”タイからパクチ”のAメロは、はっぴいの”かくれんぼ”っぽい。てか”Long Time Gone”か。CSNを聴きながら、ちょっと雰囲気を借りてアイデアを生み出していく作業が目に浮かぶ。詞に意味を見出すのはナンセンスだが、音だけで楽しませてくれるのは流石。ベースは小原礼。細野タッチのM-4”あたし元気になれ”には鈴木茂御大が参加。はっぴいばりのエレキを弾きまくる。今度出る吉田拓郎の新作にも参加しているし、つくづく今回のことは残念。春よ来いならぬM-5”池にゃ鯉”はニール・ヤングっぽいアコギが。M-8”OHAYOU”ではバンジョーを使って”Find The Cost Of Freedom”の雰囲気を。
カバーモノも面白い。M-10”ゴロワーズを吸ったことがあるかい”はムッシュ本人も参加。そう云えばムッシュ70歳の新作も本盤と同日発売だった。M-7”カレーライス”はエンケンの大名曲をアコギ一本+完璧な3声のCS&Nスタイルでカバーすると言う。ありそうで誰も演っていなかったアイデアが面白い。個人的には一番のヒットかも。M-11”自由への長い旅”は岡林の名曲を真正面からディランスタイルで。でもボーカルを抑えた意外な仕上がりが悪くない。滝廉太郎のM-12”花”は吉川忠英が演りそうなアレンジで。セルフカバーM-6”もしももしも”は”Suite:Judy Blue Eyes”の完コピ・アレンジ。よくぞここまでやりましたね…
さて、解せないのは、DVD付の初回限定盤にはボーナストラック2曲が含まれておらず、通常盤には含まれていること。通常盤の方が値段も安いし、私はモチロン通常盤を購入。ボーナス2曲は『スーパー・ガス』のM-13”アーサー博士の人力ヒコーキ”とM-14”不思議な日”のセルフカバー。前者は”Wooden Ships”なイントロに笑ってしまう。元々こんなイメージで作った曲だったのかも?ミストーン含めた擬似スティルス・ソロが聴きモノ。後者はテンポアップしたフォルクローレ・アレンジで。
さて、来る和幸ライブ、団塊の世代向けの8000円では手が出ないけれど、元ガロの大野真澄も参加するとか。日本版CS&Nが再現できるわけで魅力的。