ええ、昨日観て参りました。エンヤトットの集大成とも言える野音は行きましたが、吉祥寺で岡林ってのもなんだか珍しいものだし、ロックを再び演るってんだから行かないわけにはいかないと思いまして。
場所は吉祥寺スターパインズ・カフェ。小さいけれどじっくり近くで見られるライブハウス。流石にイス席にしていたけど、かなりぎゅうずめの息苦しい状態で。メンバーは岡林(Vo,G)にお馴染み平野融(G)、浜口茂外也(Dr)、徳武”Dr.K”弘文(G)、六川正彦という布陣。
で、全体的にみるとヤハリ良かった。ボブ・ディランが前座でやってくれた、なんて快調なジョークを飛ばしていたけれど、同バンドを従えてのZEPPツアーが控えているわけで、今回はその予行練習といった意味合いだった模様。それでも15曲、休憩もないまま、短く感じて不満が残るくらいの素晴らしいステージを披露してくれた。今年で64歳とは思えないエネルギー!
さて、演奏曲目は必死にメモりましたが以下の通り。秀逸なひばりカバーの近作を挟み込みつつも、しっかりと”今日を越えて””自由への長い旅”そして今ライブで一番のハイライトだった”それで自由になったのかい”(バンドが一体となってうねるようなグルーヴを作り上げていき、岡林のシャウトも白眉であった)なんかを演奏してくれた。エンヤトットはアンコールに1曲だけという封印具合で。でもね、エンヤトットは日本のロックンロールだと感じました、正直言って。盛り上がりが全然違ったもん。
ロックというと、はっぴいえんどのメンバーらとの共演を収めた『見る前に跳べ』とか『1973 PM9:00 → 1974 AM3:00』、それに大作ライブ『狂い咲き』なんかを思い浮かべる人が多いと思うのだが、今回のメンバーを見てもそうした重量感のあるロックは期待できなかったし、その予感は当たっていた。ベテランの浜口茂外也もパーカッショニストとしてのキャリアが長いためか、ドラムスはシンプルながらタイトとは言えなかったし、徳武弘文も鈴木茂の歪んだ音とは根本的に全然違うし。でも、徳武のカントリー・リックは本当にアタマから最後までウットリしてしまうプレイだったと付け加えておこう。ナッシュビルに接近した時代のディラン盤みたいな音を出せるんだな。お馴染みのテレキャスでスティールっぽいフレーズも自在に弾きこなすという、こんなプレイが出来る日本人ギタリストはそうそう居ないだろう。ディランと言えば、改めてやはりどうしようもなくその影響を感じてしまった。どの曲もイントロが”Like A Rolling Stone”みたいな感じでね。でもその純粋でひたむきな愛情がとても良いんだ。
正直“私達の望むものは”も期待していたんです。でも無かった。そのメッセージなんぞはもはや、今の岡林の中でリアリティがないのかな。私にとっては、自分を救ってくれた大切な1曲なんだけれどね。
2階席は関係者席だったけれど、なんかいつもの岡林ライブの客と雰囲気が違うナーと思ったらひばり様のご子息の顔が見えました。岡林のひばりさんへの敬愛の情も伝わってきて。
<バンド>
1.霧のハイウェイ
2.今日をこえて
3.血まみれ
4.自由への長い旅
5.マンハッタン
6.風の流れに
7.花笠道中
8.東京キッド
<アコギ2本>
9.月の夜汽車
10.悲しい酒
11.レクイエム〜麦畑のひばり〜
<バンド>
12.山谷ブルース
13.それで自由になったのかい
<<アンコール1・バンド>>
14.虹の舟唄
<<アンコール2・バンド>>
15.あの娘と遠くまで
岡林信康『レクイエム〜我が心の美空ひばり〜』( EMI / 2010 )
レビュー
http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100212