/ 70’s フォークの殿堂 ケン&メリー、我が良き友よ、遠い世界に( PJA-1030 /2007 )
タイトルからすると安易なジャパフォークコンピなのだが、中身はどツボなフォーク再録集。そこそこコアな選曲が渋い。コード付き楽譜集もフォーク世代向け。インタビューなんかの資料性も評価できる。
そもそもはエレック復刻プロジェクトでレアなオリジナル盤が相次いでCD化された古井戸は加奈崎芳太郎の新録3曲が目当て。大学時代には、惜しくも解体された渋谷ジャンジャンに通いつめ吼える加奈崎に熱狂し、ついには武蔵野でのコンサート実現のお手伝いをするに至ったのは望外の幸せだった。現在、盟友忌野清志郎の後を追うように病魔に冒されてしまった加奈崎のいち早い回復を、陰ながら、心より願っている。さて、ここでは古井戸時代のM-9”ちどり足”、M-11”さなえちゃん”(一オクターブ低く歌う)に加えソロでの名曲M-10”最後の誘惑”を歌う。最高。加奈崎の“リードギターを弾かせられる”安定したギターピッキングも聴ける。ちなみに”ちどり足”はあまり指摘されないがあの”神田川”の元ネタと目されている一曲。
しょっぱなに戻ると、斉藤哲夫が吉田拓郎の名唱で知られるM-1”されど私の人生”、後期の名曲M-2”ピエロ”を。”されど私の人生”はオリジナルとは違ったギター弾き語りタッチでカナリ良い。さらに中川五郎が現役時代よりも安定したピッチでM-3”腰まで泥まみれ”、エリック・アンダーソンのM-4”Come to my bed side”を。万年青年といった青臭いフォークシンガーっぷりに好感。さらに西岡たかし作のM-5”恋人もいないのに”では再生シモンズが。現在五つの赤い風船のメンバーでもある青木まり子(元ジャネッツ)の安定感に救われている。スカイラインのCMソングで知られるバズM-7”ケンとメリー〜愛と風のように”は、10年ほど前にテレビで見たときより声量が落ちた感触は否めない。しかし駒沢裕城のペダルスティールに酔う。70年代という時代を呼び戻す音だ。M-8”君を迎えにきたよ 2007”は歌謡曲風の代表曲の再録。
さらに白眉はムッシュかまやつのM-12”我が良き友よ”。ムッシュがただ普通のリメイクなんかやらないだろうとは思ったがヤハリ。懐古的な歌謡フォークが、高田漣のペダルスティールをバックに、プログレッシブなカントリーロックに変貌。脱帽の出来。さらに、カントリー繋がりでM-13”どうにかなるさ”を選曲。ムッシュがGSからフォークの世界にスンナリ入れたのは、人一倍の好奇心とともに同じアコギを抱えた「カントリー&ウェスタン」というルーツがあったからこそ。ラストの西岡たかしは弾き語りで代表曲M-15”遠い世界に”を。沁みます。3フィンガーのブルースM-14”食パンさん”も円熟モノ。