/ Touch Me , Yuka ( 1974 )
フリーソウル・ムーブメントの中で、なぜ注目されなかったのか不思議な盤。ポリドールMR5000番台シリーズの一つとして復刻。最近ではゴスペルグループ”Voices Of Japan”を率いた活動でもよく知られる亀渕友香。元々はR&Bグループ、リッキー&960ポンドでデビューしている。ニッポン放送社長の亀渕昭信は彼女の兄だ。
日本人離れした雰囲気に対し、そのボーカルは個性的と呼べるほどでもないと感じていたが、この盤を聴いて見直す。木田高介、矢野誠、星勝、林哲司のフィリーソウル風味のアレンジが時代を超えている。楽曲的には矢野誠曲がアタマ一つ抜けている感じ。さらに、シュガーベイブのコーラス参加(A-4”ひとりぼっちのトランプ”)も見逃せない。コレはシュガーベイブ盤の楽曲と並べても遜色なし。さらに松本隆−矢野誠コンビのA-5”砂糖菓子の街”もゴキゲン。珍しい及川恒平−井上陽水コンビの”夢のくらし”は、及川恒平のセルフカバー盤『引き潮』で聴いて以来、収録作を探していたのだがここに入っていたとは。A-2”降ればどしゃぶり”ではアイドル風味もアリ。
B-3”積み木の部屋”はスタイリスティックスか、というイントロに導かれる林哲司作品。なかなかに良い。さらに初期の来生悦子−来生孝夫作品B-4”酔いどれ天使のポルカ”もあったりして。作風は盤の中では異質ながら、貴重な一曲。ラストは南正人B-6”Willy don’t you cry”。雰囲気のいい盤。フリーソウルの文脈でもシティポップの文脈でも、なぜ今まで評価されてこなかったのか、本当に不思議。