/ Feelings ( MCA-404 / 1974 )
メンター・ウィリアムスと言えば、ロジャー・ニコルスと組んで数々の名曲を残したポール・ウィリアムスの弟であり(ホリー・マッケラルでは兄弟で在籍)、黒人カントリーアーティストのドビー・グレイやキム・カーンズらを手がけたカントリー界の名プロデューサーでもある。唯一の自演盤である本作ではもちろん一世一代の名曲B-5"Drift Away"を歌うほかは、トロイ・シールズのいなたくスワンピーな楽曲を選曲。A-3"One Night Stand"とB-3"Party In My Heart "は、"Loving Arms"で知られるトム・ヤンス(彼のプロデュースもやっていた)との共作。さらにA-4"Good Old Song"ではロン・デイヴィスとの共作となっている。また、B-4"Out Of Hand"はトム・ヤンス&ジェフ・バリー作と言う面白い組み合わせ。いずれもスワンピーな味付けのポップカントリーがこれでもかと聴ける盤。ただしメンターの歌はお世辞にも上手いとは言えないソングライターズ・ヴォイス。兄のポールほどの味わいもなく、そこが玉に瑕。とは言え、自演版"Drift Away"には涙涙、ですよ。ロッド・スチュワートも名盤『アトランティック・クロッシング』でカバーしていましたし。
ところで先ほど、小田和正の「クリスマスの約束」と言う毎年恒例のTV番組を見ていましたら、なんとゲストに斉藤哲夫氏が!!鈴木慶一の曲「ピカピカ」も申し訳程度に歌ってましたが、それだけにとどまらず"悩み多き者よ"、"グッドタイムミュージック"を二人で共演してしまうと言う。マアなんともオフコースファンにはおそらくワケワカラン感じだったんでしょうけれども、個人的には小田さんが今回テーマにしていた「メッセージ」にナントモ相応しい人選と思えました。何しろ70年代後半にブレイクしたオフコースのデビューはと言いますと、1969年。赤い鳥なんかと同期でありましてオリジナル曲に乏しい初期は哲夫さんの"悩み多き者よ"をレパートリーに入れていました。同世代のミュージシャンとして「フォークの哲学者」の作る先鋭的な楽曲には小田さんも大いに影響されたことでしょう。吉田拓郎も哲夫氏の"されど私の人生"をずっと歌っていましたし。
URCでのディランに影響されたメッセージを核にしたフォークからソニーに移籍して一転、ビートルズ直系のポップス、そしてウェストコーストっぽいコーラスを誰よりも早く取り入れたりと、哲夫さんの変り身は早かった!ただし売れなかった…。マアそれでも未だにお互いが歌い続けていると言うこと。確かに哲夫さんのキャリアは小田さんに比べれば華やかさに欠けていたかも知れない。でも哲夫さんが言っていましたが、「歌い続けていて良かった」と思えるかどうか。
今の若手ミュージシャンがどれだけ後世に残るかは判りません。時代が時代ですから。でもどれだけの芯を持って、メッセージを持って、音楽に力を注げるか、その意欲を持ち続けられるか、そんなことの重要性を思い知らされました。
斉藤哲夫の盤、ソニー以降にも『いつもミュージック』『一人のピエロ』『ダータ・ファブラ』と言う名盤があります。またいつか紹介したいものです。