/ Portland ( Elektra / 1972 )
アメリカのSSWものとしては最高峰とも言える出来。ゲイリー・オーガン&ビル・ラムの唯一作がCD化!うーむ、随分とマニアックな国です日本は。しかもいい音!アメリカのフォーキーな男性デュオと言うとまずはサイモン&ガーファンクルが思い出されるのだが、彼らのフォークはイギリス仕込み。だからか知らないがゲイリー・オーガン&ビル・ラムみたいなローカル臭たっぷりのアーティストの方がよりアメリカの景色が浮かんでくる。ランバート&ナッティカムなんかもアメリカ的なイメージ。いなたいボーカルってのもアメリカを感じさせる要素。
共作1曲、ビル・ラムの3曲(M-2”Reborn”はなかなかの名曲)を除いて7曲はゲイリー・オーガンの作。全編アコギのカッティングがプリプリと聴こえて実に心地良く、際立ったシングルヒットが無いことがよりアルバムとしての一体感を高めている。ゲイリーは後にスティーヴン・ビショップを雛形にしたAORなソロ作『Gary Ogan』(同時にCD化)も出すことになるのだが、弾むようなポップソウルを生み出すリズム感はフォーキーな本作でもその片鱗を見せている。個人的にはバンジョーも加わったM-5”Everything You Knew”なんかが好み。M-6”KAC”はCSNみたいな曲。ピースフルなM-7”Our Sweet Love”を聴けば誰しも幸せな気分になれるはず。アルゾのソロ作と似た質感。ラストM-11"I Wanna Live"のやるせなさと言ったら…名盤です。
ちなみに下記サイトではGary Oganの1982年作『Let Go The Heart』、ゲイリー曲集『Voices』、近作『Barcelona』も買える。ただし、奇跡の本作『Gary Ogan & Bill Lamb』と同様の質感を求めるのは無理な話。またゲイリーは、ポートランドのローカルアーティストStevi Marieの2004年のデビュー作『I Thought I Told You』を全編バックアップしてもいる。こちらはCDBabyで購入可能(http://www.cdbaby.com/cd/stevi)。