/ Overnight Sensational ( Rhino 77618 / 2006 )
いやはや本日購入して参りまして、もう何度リピートしたことか…ウルウル。ついつい感情的になってしまったのだが、ダブル・ダイナマイト!!元サム・&デイブのサム・ムーアの新作がまさか出るとは全く予想外。しかもここまでのゲスト陣とは…声も出ない。エリック・クラプトン、故ビリー・プレストン、ブルース・スプリングスティーン、マライア・キャリー、スティング、ポール・ロジャース、ヴィンス・ギル、ジョン・ボン・ジョビ、シーラ.E、ワイノナ、ズッケロ…。北島三郎並の厚遇も、45年選手には当然と言えよう。
近年も素晴らしい喉を維持していただろうことは、DVDでも入手可能な『Back To Stax』(1990)や黄金期のソウルシンガーの今にスポットを当てた『ソウル・サヴァイヴァー』(2002)等でも確かめることが出来た。後者には惜しくも今年亡くなったウィルスン・ピケットの元気な姿も。
冒頭M-1はアン・ピープルズの"I Can't Stand The Rain"。ワイノナとのデュエットだが、打ち込みと生が融合する感触、ボーカルの肌触りもエリック・クラプトンの近作を思い出させてくれる。ビリー・プレストンのハモンドで早速泣く。ブルースロックみたいなM-2"Better To Have And Not Need"はブルース・スプリングスティーンが声をむちゃくちゃ張って息巻いていて。ここでのハモンドはマイク・フィニガン。グレッグ・フィリンゲンズも参加している。そして勝負曲M-3"Blame It On The Rain"はナント、"Miss A Thing"、"Look Away"、"Blue Eyes Blue"等ナド大ヒットを増産しているダイアン・ウォーレン作の好バラード!かなりヒット性のある仕上がりで、サムもいつもの汗を抑えた歌いっぷり。良い。どうでもいいですが、ダイアン・ウォーレンの自演盤を聴くのが一生の夢です。
さらに懐かしのソウル風味M-4"Lookin' For A Love"ではジョン・ボン・ジョビとダブル・ダイナマイト。互いの持ち味を生かしきっていて、ポップでかなり良い仕上がり。さらにポール・キャラック曲M-5"Ain't No Love"はポールと同じブルーアイドソウル歌手としては先輩のスティーヴ・ウィンウッドと共に歌う。かつてのウィンウッドのポップソウル路線に腰も揺れ。次なるM-6"None Of Us Free"は、バリー・マン・シンシア・ワイル夫婦とブレンダ・ラッセルが共作したナンバー。かつてレイ・チャールズが90年代の名盤『A Song For You』で歌っていた時、余りピンとは来なかったのだが、スティングの哀愁味を帯びたボーカルと相俟って今回は素晴らしく響く。今気づいたがこの曲はじめ数曲でTommy Simsが参加している。クラプトン、ワイノナ・ジャッドの"Change The World"にライターとして関わり、Gordon Kennedy、Wayne Kirkpatrickらと共にカントリー畑でR&B風のアクースティック作品を生み出している人物。
コンウェイ・トゥィッティのスタンダードM-7"It's Only Make Believe"はマライア・キャリー、ヴィンスギルと一緒に(マライアは犬の様な高音を出すのみ)。コンウェイ・トゥィッティとサムはかつて、南部のエルヴィスことトニー・ジョー・ホワイトの"Rainy Night In Georgia"をカバーした仲。"Rainy Night In Georgia"を収録していた『Rhythm Country and Blues』は亜米利加音楽の、ジャンルを超越した根っこを我々に見せつけてくれる盤。
さらにさらに、アーメット・アーティガン作の軽快なM-8"Don't Play That Song (You Lied)"は本物のソウルナンバー!泣きメロです。イントロでは"It Tears Me Up"を思い出す。M-9"If I Had No Loot"ではドン・コスタの娘、ニッカ・コスタが顔を出す。彼女がお嬢ちゃんの頃の盤を見慣れていたせいか、、そこそこの御歳になられてますね。M-10"Ridin' Thumb"はシールズ&クロフツ作のフリーソウル・クラシックス。トラヴィス・トリット、サムに負けず劣らず実に歌い回しが上手い。カントリー歌手はホントに侮れません。さらにそう思わせてくれるのが、ガース・ブルックスのM-11"We Shall Be Free"。ポール・ロジャースの端正なボーカルとも相俟って、本作のハイライトか。ガースのアルバムではそこまで注目していなかった曲だが、最高に良い。
さて、やっとラストですが故ビリー・プレストンのM-12"You're So beautiful"。クラプトンのコレデモカという程にすすり泣くギターと共に、本盤は終わりを告げるのです。ビリーを頭と最後にもってくるなんて。泣けますね。
とにかく全盛期と比べても引けを取らないサムのボーカルが素晴らしい。豪華ゲスト陣に食われることもなく、対等で。
ちなみにサムの未発表ソロ作品集『Plenty Good Lovin'』(2002)も必聴。タイトル曲はスパイラル・ステアケース・ライクなソフトロック。あと、ルー・リードとデュエットした"Soul Man"なんてもリリースしてました。
個人的にはサム・ムーア、最も好きなソウル歌手ナリ。鼻歌はたいてい"ホールド・オン"だし。