*[カントリー] Wynonna / Revelations (Curb / 1996)
ここ数年は新譜を除き、1:20ぐらいでレコードになっていたけれど。何だかここのところ、レコのみならず、CDの愛おしさに改めて目覚めている。90~00年代にどれだけのCDを買ったことだろう。それが数年前の引っ越しの時にCDとブックレットだけ残して、プラスチックの家が建つぐらいの(笑)CDプラケースを捨てたことで一旦踏ん切りがついたのだった。それがまたCDを愛おしいと思うのは、90年代から00年代初頭あたりまでの新譜が、サウンドもプロダクションもゴージャスだったなぁと思い直しているから。普通に売れた盤を今聴いても、余り古くなっていないし、むしろレコーディングの質が高いから、音が良い。ある意味、戦後ポピュラー音楽の到達点だったのかもしれないな、と。あとは60~70年代のミュージシャンが、死ぬ前にもういっちょ売れるぞってな気概で元気に頑張っていたのも大きい。今思えば、自分と同じ40代なんだけれど。自分に照らしてみると、今からもういっちょっていう気力はない。ってか、まだ売れてないし(笑)ロストジェネレーションとはよく言ったもので、我々世代はゴールテープを切ることのない、宮台真司言うところの「終わりなき日常」を生きる宿命を負わされてきたのだとつくづく思う。
そんなボヤキはいいとして、1996年リリース、The Judds(ワイノナ&ナオミ・ジャッド)を経てソロになった女性カントリー歌手ワイノナ・ジャッドの『Revelations』。エリック・クラプトンが翌年カバーしてヒットした”Change The World”のオリジナルが収録されている盤として、忘れがたい(クラプトン版の方が当然売れる作りになっている)。
CCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)のライターであるゴードン・ケネディ(White Heartのメンバー)、ウェイン・カークパトリック、トミー・シムズのコンビが手掛けた”Change The World”。リリースされた時代、ディキシー・チックス、ガース・ブルックス、フェイス・ヒルなどアメリカの若手によるカントリーのシーンが賑わいつつあった。常にアメリカのシーンに目配せしてきたクラプトンらしいカバーだったと思う。この流れからテイラー・スウィフトが登場することになる。ソングライターでいうと、80年代初頭にソロを出し、1989年に再デビューしていたベス・ニールセン・チャップマンが引っ張りだこだった。当時はアコースティックを基調とした新作カントリー・ロックとして、普通に聴いていたけれど、今思えば、アメリカーナというある種ナショナリスティックな文脈の音楽ジャンルが形成される萌芽だったのかも。グローバリゼーションいけいけドンドン時代の反動の産物。ちなみにディキシー・チックスは近年南部の保守性を想起させるディキシーを取っ払って”チックス”と名乗るほどのリベラルなのだけれど(テイラー・スウィフト同様)、こちらのワイノナ・ジャッドはタイトル『Revelations』からもわかる通り、割とキリスト教保守派寄りの典型的なカントリーということになる。レーナード・スキナードの”Free Bird”のカバーまでありますので。ただし、楽曲は最高。ゲイリー・バー、デイヴ・ロギンス、ゲイリー・ニコルソン&デルバート・マクリントン、トニオKなどの腕利きが楽曲を提供。アソシエイト・プロデューサーのドン・ポッター(シンガー・ソングライターもののファンにはマグラス&ポッターやダン・ヒルのバッキングでも知られる)が手掛ける王道のカントリー・ロック・サウンド。現イーグルスのサポート・メンバーであるスチュワート・スミスや名手ダン・ハフ、ウィリー・ウィークス、マット・ローリングス、ジム・ホーンなども参加している。久々にThe Judds1984年の『Why Not Me』も聴いてみたけれど、こちらもドン・ポッターがバンドの仕切りで、ビル・ラバウンティの"Drops of Water"のカバーやケニー・オデル、デニス・リンドの曲も入っていた。