AOR〜シンガー・ソングライター・ファンには今年最大の贈り物になるはず。凄い盤が出た。米ターゲットでのみ独占販売された有名ソングライター達の新録音集。プロデュースはフィル・ラモーン!!恐るべし仕上がり。ホールマークからジェイムス・テイラーのクリスマスソング集やビーチ・ボーイズの未発表盤が出たり、スターバックス北米店からはボブ・ディラン1962年のギャスライトテープが公式発売されたり、小売店や通販チェーンのリリースが侮れなくなってきている。
まずはバート・バカラック&ピーボ・ブライソンによる極上のM-1”Alfie”でスタート。バカラックは大胆にもループを採り入れたM-8”I Still Remember”でも登場。昨年出た意欲作『At This Time』と同様の音。お次は驚喜!ブライアン・ウィルソンによる新録M-2”God Only Knows”。ジェフリー・フォスケットらをバックにオリジナルに忠実なアレンジで。最近荒れ気味だったブライアンのボーカルもここでは静謐な透明感を湛え、いかなるライブよりも完成度が高い(当たり前か…)。さらにバート・バカラックとブライアンの共作M-6”What Love Can Do”が堪らなく良い!バカラックの品の良さとブライアンの切ない歌声がとのマッチングが素晴らしい。ソングライターの交歓ということで言えば、A-5”Say Goodbye Today”ではあのキャロル・キングと、カーペンターズ”Rainy Days and Mondays””We’ve Only Just Begun”などで知られるポール・ウィリアムスの共作!歌うのはつづれおりな感触でキャロルが。転調が効果的でドラマティックな作。2005年のライブ盤『The Living Room Tour』を聴いた時もそうだったが、最近、キャロルのぶきっちょで詰まった歌声を聴くだけで涙が止まらない。キャロルはM-11で”Home Again”の再録をしているが、ここではスーザン・アグバーなる女性歌手とデュエット。キャロルのピアノがない分、彼女の色は薄い。さて一方ポールの方も、ウィリー・ネルソンとM-9”Rainbow Connection”をデュエット。1997年久々のソロ作『Back To Love Again』でポールの自演版が初めて聴けたが、ここではウィリーに多くを任せる。しかし二人の声って実は似てます。ラストのタイトル曲M-14”New Music From An Old Friend”はジャズ歌手ジェーン・モンハイトが歌うバラードでポールの詩曲。何気ないメロを伸びやかなボーカルで聴かせ、流石。
アクースティックな所では御大クリス・クリストファーソンが代表曲M-7”Sunday Morning Coming Down”とM-12”The Wonder”の2曲を。飾り気のない簡素な音に、何とも深い味わい。フレッド・モーリンのプロデュースでソングライターの生にコダわった作品集三つを覚えているだろうか。ジミー・ウェッブ、バリー・マン盤と共にクリスの盤『The Austin Sessions』があった。そこでの音に近い。さらに同じくターゲットのみで新作をリリースしたケニー・ロギンスはここで新作からのサンプル一曲を。ロギンス&メッシーナで発表したM-4”A Love Song”の再録。ロギンス&メッシーナの再結成もあったし、カントリーっぽい作風が近年戻ってきた。いつまでもデンジャー・ゾーンじゃ困るけど。さらにM-13では割とケニーと歌い口が似ているリチャード・マークスとの共作。2003年の『It’s About Time』でも数曲リチャード曲を演っていましたが。そのリチャードは切ない王道バラードM-3”Your Goodbye”とM-10”Hold On To The Nights”のリメイクを。彼の芸歴はと言うと、そもそもライオネル・リッチーのバックシンガーとして…なんて言われているが、そもそもはウェストコースト・ロックのフィールドから。ソコにはじまり、産業ロック〜AOR界での大成功、近年は映画主題歌やアイドルの勝負曲提供までとメインストリームを歩み続けてきた彼。相当な地位にまで上り詰めた感がある。ラストのスティーヴン・ビショップM-15”Save It For A Rainy Day”は仲良しエリック・クラプトンがアコギ参加したオシャレなブラジリアン・アレンジ。これもサンプル収録で、この曲をはじめ12曲を収めた(ナント”Under The Jamaican Moon”も入っている!)新作『Saudade』がこれまたターゲットで独占販売。これも相当良いのだが、また次の機会に。
ということで、ターゲットのラインナップには目が離せない。他にも、
サンタナ、ジム・クロウチ、キャロル・キング、デュアン・オールマン、ハリー・チェイピン、ジェイムス・テイラー、リック・ネルソン、ジョン・フィリップス、ブライアン・ウィルソン、ボブ・マーレー、ロビン・ギブ、アーロン・ネヴィル、アーロ・ガスリー
の「息子・娘」に「親の曲を歌わせる」と言う鬼の様な企画盤まで出てるし。
いずれも、e-bayで落とせばすぐ届きます。