/ Andy ( Columbia AL34299 / 1976 )
アンディ・ウィリアムス、ジョニー・マティス、ジャック・ジョーンズあたりのポピュラー歌手のLPは見つけたら買うことにしている。とにかく曲良し、歌良し、ということでMOR盤の王道で当たりハズレは殆どない。しかも、60年代後半〜70年代の作品には、ソフトロック、フォーク、クラシックロック、AORなど畑違いの楽曲が素晴らしいアレンジャーに料理され収録されているし、実際曲を作った当のロックフィールドのミュージシャンがバッキングを担当していたりもする。それにジョニー・マティスなんかはフリーソウル的に捨てがたいトラックも結構あるのだ。
さて、そんなわけでこのアンディ・ウィリアムスの盤も、彼のファンには無視されそうだが、ロックファンにはアピールする一枚。どうしてこうなっているのか判らないが、選曲がなかなか面白い。A-1はジェイムス・テイラーのバッキングで御馴染みセクションのキーボーディスト、クレイグ・ダーギが自身唯一のソロ作に収めていた”Yellow Beach Umbrella”(ジュディ・ヘンスキとの共作)。もちろんクレイグ本人はじめセクションの面子がバックを担当。この時丁度Columbiaからソロ作を出していたので、その繋がりだろう。Art Garfunkelの1975年のロマンティックな名作『Breakaway』に入っていてもおかしくない雰囲気。さらにA-2はキム・カーンズが同年に出した同タイトル作より感動的な”Sailin’”。キム・カーンズ自身がウォーターズの面々とともにコーラス参加している。(この盤、カーンズがこの曲のみならず全編コーラスアレンジを施す) そしてそして、A-3はなんとブルース・ジョンストンの”Thank You Baby”!こちらも同年Columbiaよりリリースされた『歌の贈りもの(Going Public)』に収録されていた。ストリングスアレンジ共々とろけるような至福の一曲。A-4のスタンダード”Since I Fell For You”は、なぜかエレピの感じが、先ほど挙げたブルース・ジョンストンの『歌の贈りもの(Going Public)』とよく似た感触。A面ラストA-5”My Lonely Room”は玄人好みなピアノ系SSW、ピーター・スケラーンの作。これもアーティのボーカル名盤『Breakaway』『Fate For Breakfast』『Scissors Cut』を愛聴している方には訴えるものがあるだろう。
B-1”Put Your Blues to Bed”はというと、デヴィッド・フォスターと共にエアプレイを結成していたジェイ・グレイドンの楽曲。ジェイ自身もギターで参加している。曲は泣けるメロのシャッフル調バラード。ジェイといえば、並み居る強豪をなぎ倒してスティーリー・ダン”Peg”のオーディションに合格、そこで演奏した変態的なギターソロばかり語られるのだが、音楽の質を確実に高めてくれる品のあるギタリストだと思う。ジャック・ジョーンズの1975年盤『What I Did For Love』などにも参加していた。ゲイリー・アッシャーのプロデュースでソロアルバム発表後(そこにはカート・ベッチャーも参加)、ソングライターとして大成したアンディ・ゴールドマーク作の”If You Ever Believed”はAOR風な爽やかなバラードだが、そこではなんとデヴィッド・ポメランツがボーカル参加していた(A-1にも参加)。デヴィッド・ポメランツといえば、Barry Manilowに”Tryin’ To get The Feeling Again”を提供したピアノバラードの帝王。ちなみにポメランツ1971年デッカからの1stにはなんとポール・サイモンがエレキギターで参加していた。さらに、ラスカルズの緩い”Groovin’”のカバーを決めてくれた後はB-5”Tryin’ to Forget I Loved You”、B-6”The Poem”。ラスト一曲のみ大袈裟なマイナー調のメロで、よくあるポピュラー盤の風情なのが残念。でもここまでよくぞ耐えてくれた、という感じ。
ちなみにソフトロック的な視点で聴けるアンディ60年代ものでは編集盤『In the Lounge with Andy Williams』がいい。