*[AOR] Jason Scheff / Here I Am ( Bassline Productions / 2019 )
このベタベタな盤を何気に最近よく聴いている。デビューから50年を超えたシカゴ、ピーター・セテラ脱退後の傀儡と謳われたジェイソン・シェフのリメイク・ソロ盤。シカゴのパワーバラードの名曲がちゃんとスタジオ再録音されている。後釜の印象も強いけれど、加入して31年在籍したわけだから(2016年に脱退)、ピーターの加入期間を超えていたことになる。
ソロとしては2枚目になるのかな。ファースト・ソロは高校生の頃、高田馬場にあった中古盤店タイムでサンプル盤を買った記憶がある。TOTOのボビー・キンボール、ジョセフ・ウィリアムズ、そして当時シカゴに在籍していたビル・チャンプリンと共にWest Coast All Starsというアカペラ企画グループを組んで2枚アルバムを出したこともあった。これも高3か大学生になりたての頃に買ってよく聴いていた。
で、今回の盤はジェイソン加入後のシカゴの大ヒット”Will You Still Love Me?”に始まり、シカゴではビル・チャンプリンがメイン・ボーカリストだった”Look Away”(しかもビルもボーカルで参加!)、”What Kind Of Man Would I Be?”、そしてピーター時代の”Feelin’ Stranger Everyday”や”Hard To Say I’m Sorry”も演っている。アレンジは原曲に忠実で、これは正解だと思った。”Saturday In The Park”のオマージュ的メロディを持つ”Wonderful Day”も入って、完成度はかなり高い。プロデューサーはナッシュビル・カントリー・ポップの雄、ラスカル・フラッツのジェイ・デマーカス。ラスカル・フラッツのパワー・バラードはシカゴ的だと感じてブレイクした頃よく聴いていたけれど、こんな所で結びついた。
ちなみにパワーバラード(バラードにロック・バンド、とりわけ歪んだエレクトリックギターのソロを入れるという今となっては定番のアレンジ)のアイデアの元はカーペンターズの”Goodbye To Love”。んで、そうした楽曲のメロディの原型を作ったのは間違いなくバリー・マン。バリーがダン・ヒルと共作した”Sometimes When We Touch”みたいのがプリAORバラードの名曲でした。そのダン・ヒルと同郷カナダのデヴィッド・フォスターが、バリー・マンの正統な継承者でしょう。”Hard To Say I’m Sorry”を聴くとそれがよーくわかる。そして、デヴィッドの継承者がレズビアンのアーティスト、ダイアン・ウォーレンですね。エアロスミス” I Don't Want to Miss a Thing”で知られている。ジェイソンの本盤でリメイクされている”Look Away”もダイアンの作。そういえば、何年か前にジェイソンのsoundcloudを覗いていたら、おそらく無断で、ダイアン・ウォーレンの”Look Away”のデモ音源をアップしてたんですよね。この辺が二世ミュージシャン(ジェイソンの父はエルヴィスのベーシスト、ジェリー・シェフ)の脇の甘さか(笑)ソングライターのデモを長年集めている私はすかさずコピーしてしまいましたが…しばらくして消されました。ダイアンの音楽出版社が出しているデモにも何曲かダイアン歌唱のデモが入っているが、そこにも未収録だったもの。
最後に我が家のお宝、シカゴのメンバーのサインが全部入った『Chicago18』。たぶん業界関係者がお亡くなりになったかで売ったものだと思われるけれど、某レコード100円市にこういうものが沢山出ていたうちの1枚。家を傾かせるぐらい、あるいは人生を狂わせるぐらい(まぢで)レコードを買っていると、時々嬉しいことも
ある。