/ Surprise ( Warner /2006 )
衰えぬ冒険心、旺盛な創作意欲、まさにサプライズ! 全編ブライアン・イーノとのコラボレーションがなんと言ってもオドロキのポール・サイモンの新作(イーノのクレジットは”Sonic Landscape”)。イーノのワールドミュージック的アプローチを受け継いで『Graceland』、『The Rhythm Of The Saints』を発表しているサイモンですから、相性は完璧。1曲目”How Can You Live In The Northeast?” からすでにキテるな、という音。御歳64とは思えない。M-2 “Everything About It Is A Love Song”は冒頭フォークっぽい作品だが、イーノの打ち込みドラムス、ビル・フリゼールのギターに続きスティーブ・ガッドの大地の鼓動のような生ドラムスが入ってきてすごくスリリング。これは目玉曲でしょう。イーノとサイモンの共作M-3”Outrageous”はファンキーなAメロに始まり、ソロ前作『You’re The One』のタイトル曲のようなサイモンらしいヴァースが登場する。あと目立ったところでは9.11以降のアメリカを深層的には踏まえたであろうM-5”Wartime Prayers”が印象深い。アコギのギターソロが美しく、ゴスペル隊Jessy Dixon Singersを従えて、彼なりの00年代盤”明日に架ける橋”とでもいうべきアプローチか。間奏以降のハービー・ハンコックのピアノソロがたまらなく美しく、切ない。ラストM-11”Father And Daughter”はエディ・ブリケルとの間に設けた息子エイドリアン・サイモンがボーカル参加したもので、ファンは既に入手済みと思われる、『The Wild Thornberrys Movie』における2002年の既発表曲。オスカーにもノミネートされた。ボーカルが前に出ている感じで、S&Gっぽいメロディとハモが印象的。昔からのファンにもアピールするもので、ボーナストラック的に聴ける。この盤ミュージシャン参加は先に記した他ではベーシストではピノ・パラディーノ、エイブラハム・ラボリエルなど達者な顔ぶればかり。
通して聴いてみるとソロ前作よりも迫力を増した音作りが印象深い。メロディラインは今までの作品とさほど変わっていない。前作は、S&Gの再々(々)結成ライブ盤『Old Friends』だったということで、そこでは70年代後半以来装着していたカツラまでも取り外し、老いて回顧的印象を与えたポールだったが、ここまで挑戦的な作品が飛び出してくるとは。全く最後までサプライズ。