/ OLD FRIENDS LIVE ON STAGE Deluxe Edition ( Warner48967-2 / 2004 )
サイモン&ガーファンクル来日公演、11日の東京ドームに行って参りました。アート・ガーファンクルは15年くらい前?に一度、エリック・ワイズバーグや奥さん、息子を引き連れてきた7,8年前にも再び見に行ったことがあるのだが、ポールは初。トニカク楽しみにして臨んだ。
個人的にはS&Gと言うと、初めてソロも含めてコンプリートにしたアーティスト。とりわけアーティのソロ盤のソングライター探索から、音楽探求の旅が始まったようにも思う。さらには、ギター。あまりコピーするのは好きではないけれど、大学時代、ひたすら友人とS&Gをハモッたものです…
さて、コンサートに先立っては『LIVE1969』がCD化されたけれども、オリジナルアルバム未収録だった”Silver Haired Daddy of Mine”や”Bridge Over Troubled Water”の初期演奏を含むこのライブ音源、実はファンにとってはなんら珍しいものではなくて。昔から駅売りのブートでもそこそこ高音質な同音源を安価で入手できたし。それより、前回の再結成ライブツアーのCD+DVDを収めた『OLD FRIENDS LIVE ON STAGE』の方が予習に役立った。
それで、東京ドームのギグ。ソロ含め代表曲のオンパレード!”Homeward Bound”、”Mrs. Robinson”、 “America”、”Scarborough Fair”、” The Sound of Silence”、”El Condor Pasa”、”Cathy’s Song”、"Cecilia"…などなど。でもそれより何より、二人のシルエットを見るだけで胸が一杯になったのだ。フィルムに続いて二人が登場し、ポールのギター一本で歌う”Old Friend〜Bookends”に始まったステージ。老成したサイモンの詩は、今日この歳で演奏することを予想していたかのよう。ラストの”Leaves That Are A Green”にも同じ感想を持ったけれど。さらに、前回の再結成以前には、ステージで演奏されることはまずない、とされてきた”I Am A Rock”、”A Hazy Shade Of Winter”を立て続けに披露。”I Am A Rock”は間奏のオルガンや、ウマヘタでシックスティーズ感覚な荒っぽいエレキが実にいい味。ディランとも通じる面子で音作りをしていたコロンビア時代のフォーク・ロックを現代に蘇らせた感じ。
ドームの劣悪な音質を嘆く声もあったようだけど、そんなの初めからわかり切っているハナシですわな。60年代のPAはきっとコレ以下だったんだし。筋金入りのファンなら、想像力を研ぎ澄まし、衰えぬハーモニーにじっと耳を澄ましていたはず。マア、アコギ中心の楽曲は、ボーカルにたっぷり掛かったリヴァーヴもあってか、ドームにしては及第点だったと思うけど。
お馴染みのルーツ披露コーナー。Tom&Jerry時代の“Hey, Schoolgirl”に続き”Be-Bop-A-Lula”を通して演ったのにはビックリ。”Mrs.Robinson”にはバディ・ホリーのジャングル・ビートもの”Not Fade Away”が織り込まれていたし。かつてのセントラル・パーク・コンサートの” Kodachrome”に” Maybellene”が織り込まれたように。サイモンのリズムものへの拘泥と、ロックンロール・ジェネレーションとしての自負を感じる。ただし、トム&ジェリーのデビュー曲はともかく、ジェリー・ランディスやティコ&ザ・トライアンフスにしても成功は収められなかったが。
ソロ・パートは面白かった。二人とも流石に生き生きしていて。アーティは自身最大のヒット曲、マイク・バット作の”Bright Eyes”でスタート。しかし余り拍手がないのが悲しかった。アーティのソロを聴きこんでいるファンも結構いたはずなんだけど。まあ、結局ドームの大多数はマイナーキーの”El Condor Pasa”やら”Scarborough Fair”ばかりに拍手を送る往年のファン達なのですよ。そうした支持層が彼らを支えてきたことも事実。『Concert in Central Park』に収録された唯一の外部ライター曲”Heart in New York”(ギャラガー&ライル)も披露。アート自身が念願のシンガー・ソングライターとなった、マイア・シャープ&バディ・マンドロックとのトリオ作に収録された”Perfect Moment”も、”My song!”なんて言って喜んで歌っていて。
そしてそして、ポールのステージが圧巻だった。『Graceland』の冒頭2曲”Boy in The Bobble”、”Graceland”を立て続けに聴かせてくれたのだから!ポールのこなれたボーカルはホント凄かった。S&G時代からワールド・ミュージックを上手く取り入れて自身の音楽を作ってきたポール。南アフリカのミュージシャンを加えたバンドの中心で音頭をとる姿、まるで喜納昌吉か、っていうくらい。そしてそして、”Still Crazy After All These Years”。コレには涙しました。実に映画的で、ニューヨーカーとしてのセンスを感じさせる1曲。ただただ素晴らしかった。
そして第2部のスタートが、映画『キャッチ22』の撮影のためにS&Gのレコーディングに戻ってこなかった、トム&ジェリーの”トム”ことアート・ガーファンクルを待つサイモンの心境を歌った、”The Only Living Boy in New York”。今回はトムが後ろにちゃんと控えていて。胸が熱くなる。さらに、”My Little Town”に次ぐ”Bridge Over Troubled Water”がヤハリ圧巻。でもこの曲が今のS&Gの力関係を表しているようで。現役時代のポールのコンプレックスはアーティを下回る身長から起因する、自らの音楽的才能の過小評価。アーティの方が曲を作っていると信じられていた、なんて今じゃそんな巷の評価が信じられないけれど。まあでもこのNo.1ヒットにおけるアーティの圧倒的な歌唱力と言ったら…ポールの才能をかすれさせたのも頷ける。しかし、昨今はアーティも老いから来るものか、声も幾分か低くなり。一方ポールはというと、ここ10年くらいで歌い回しや声量に成長が見られて…”Bridge Over〜”に絶えず纏わり付いていたコンプレックスからようやく解放されたのかな、と。ジーター神父にインスピレーションを受けたゴスペル風の歌いまわし(弾き方のデモでも聴けるけど)が今回も2番のポールのパートで飛び出して、大興奮。アーティも3番をナントカ歌いきって。
“The Sound of Silence”。聞き飽きたこの曲に涙が出てしまうって何だろう。”The Boxer”にしてもね…。それにしても”The Boxer”の間奏のテルミンは面白かった。
御歳67。これが最後の来日なんて悲しすぎる。二人がステージから去る姿を目で追えなかった。80歳になったらもう一度セントラルパーク・リヴィジテッド、なんて無理かしら??