/ Same( Sony /2006 )
ポール・マッカートニーの離婚、ですか。下世話なニュースで恐縮だが、ヘザーさんとは相性がイマイチだった模様。
さてさて、一連のナイアガラものからすると、一番ナイアガラから遠い位置にいると思っていたシャネルズ〜ラッツ&スター。しかし、これだけのナイアガラものが枯渇している状況になってくると、これぞナイアガラ、と思えてくるから不思議だ。ということで、ラッツ&スターからリーダー鈴木雅之・桑野信義(激ヤセしていた)・佐藤善雄(もちろん田代は不参加)、そしてゴスペラーズからは村上てつやと酒井雄二が参加したその名もゴスペラッツ!はなかなかイカした出来。30分間相当に楽しめる。バッキングは80年代ソニーの音作りを支えていた清水信之、林立夫、岡沢章、吉川忠英、徳武弘文、井上鑑、今剛、シャネルズのサウンドプロデュースをやっていた元シュガーベイブの村松邦男、中西康晴、浜口茂外也、青山純、美久月千晴…と豪華そのもの!しかも補佐人として大瀧詠一が名を連ねている。ジャケは駄目押しのようにロンバケの永井博。ゴスペラーズをインディーズ時代に支えた佐藤善雄が縁になったこのユニットだが、M-1”ハリケーン”のリメイクから飛ばしていく。小林克也のMCに乗せて、黒塗りジャパニーズによるソウル・レビューの幕開け。ゴスペラーズの面々も馴染んで歌っている。鈴木雅之のトリビュートアルバムには秀逸なゴスペラーズ版 ”Tシャツに口紅” が入っていたが、村上のねちっこいボーカルは誰がどう言おうとマーチン似。M-1とラテン歌謡ソウルM-2”まさか赤坂Show Time”、M-6”Valentine Kiss〜永遠の誓い〜(酒井、桑野ボーカル)”M-7”時間飛行”(先日惜しくも若くして亡くなったポップソング王、高橋ひろの音にソックリで驚いた!)はシャネルズ、ラッツを支えた井上大輔(忠夫)の未発表作品(新曲)。このアルバムも井上氏に捧げられている。井上氏と言えば、近年惜しくも自殺してしまった大作曲家だが、彼は元々アメリカンポップスはじめ洋楽に造詣が深かった。にもかかわらず、ブルーコメッツ在席時に発表した”ブルーシャトウ”がはからずもGSの歌謡化を促すきっかけになってしまったことを終生悔いていた。しかし、アメリカンポップス色全開のシャネルズのデビューヒット”ランナウェイ”が彼の積年の悔恨を晴らす会心の一撃となったようだ。
M-3 ”リンダ”もナイアガラファミリー(とも言える)竹内まりや作のバラード。これを鈴木雅之が熱唱。アン・ルイスのものより出来が良いようにも思えるが、松本晃彦のアレンジが打ち込みなのが返す返す残念。どうせなら生演奏で通した方が良かったのでは?まあ折角リメイクするのだからコンテンポラリーな味付けがないといけない気もするので、そう考えればこの試みも悪くないか。さらにM-4”Interlude〜クイズ♪バーボボバー♪物語〜”なるドゥ・ワップイントロクイズを経て (お笑いを入れてくる辺りもなんとも懐かしい感触。ここでは即興風に”月の渚”をハモる所が最高に良い)、大瀧詠一作品 ”星空のサーカス〜ナイアガラへ愛を込めて編〜”。御馴染みの"星空"に、伊藤アキラ-大瀧詠一コンビのCMソング風新曲”スパイス・ソング”が挟まっておりました!コレがまたなかなかいい曲。マニア向けに言うと、最後に判りにくいけど大瀧氏のため息収録です。。ラストはファイブ・サテンズの”The Voice”を。鈴木氏は日本語詞がやはり良いのだが、こうしたルーツとなった英詞曲の生ハモリを聴くと、キラキラしたドゥ・ワップの深みに又嵌っていきそうになる。ライノのボックスをまた聴き始めようか。
さて、改めてシャネルズの1stも久々に聴いてみたが、新作を聴いた後だとリーダーの声も意外と粗かったのだと気づく。普遍の声だとばかり思い、余り意識していなかったが、50代に突入したマーチンのボーカルは相当に熟成されてきているようだ。ちなみにマーチンのソロアルバム、好き嫌いはあるが、楽曲重視のボーカルものの王道。近年はヒット曲が少なくなったことでとっちらかった作品も無くはないが、出るとつい手に取ってしまう魅力がある。