/ Boro Boro (Liberty LTP-9111 / 1974)
J−カントリー・ブルーグラスの快作“ボロボロ 楽学”。主役は、ハマクラ詩曲のシンプルなバラード”バラが咲いた”で日本のモダンフォークの始祖扱いされているマイク真木。なんと本作にはThe Nitty Gritty Dirt BandからJohn McEuenがバンジョー、ドブロ、フラマン、アコギなどで全面参加している。日本勢は石川鷹彦らが全編で対抗。これがなかなか完成度が高い。A-1はJohn作の琴ライクなフレージングが微笑ましい日本風インスト””Punch in Break Down”。(この曲を除いてマイク真木の自作) A-2ではまだ赤ちゃんだった真木蔵人を歌っている。A-3”ボロボロ歯ぶらし”はジャグ風。A-4”せまい日本そんなに急いでどこへ行く”はJohnのバンジョー・フラマンが実にごきげんなブルーグラス。原曲はF.&B.Bryantのスタンダード、”Rocky Top”だ。A-5は山上路夫作詞の印象に残らない平凡なカントリーバラード。A-6はモービル石油の名CMソングの再演”気楽に行こう’74”。これも本場ブルーグラスの音作りで、かなり良い。Johnのバンジョーが核となっているが、大江俊幸のペダルスチールもごきげん。A-4もそうだったが、高度成長期をひた走ってきた忙しない日本人の心を癒したメロディーがカントリーだったというのは興味深い。(ちなみに70年代初頭、日本の音楽シーンにおけるカントリーというと、元はカントリー畑のムッシュ”どうにかなるさ”の方が米の音楽事情からするとよっぽどタイムリーな呼応だったといえるが、売れなかった。高石ともやのナターシャ・セブンも同様、売れなかった。)そういえばまた関係ないが、1966年ブリジストンのCMソング、小林亜星の”どこまでも行こう”は覚えやすいカントリー風の3コードのメロディであるせいか、”気楽に行こう”と共に思い出されてしまう。さて、B面の方はというと、後年の”エンヤトット”岡林信康も似たような曲があったがB-2”おいらは天下のJAPANESE”なんていう曲も。さらに懐かしの一曲として浮いてしまうように思えたキャンプソングの定番、B-4 ”キャンプだ ホイ!”だが、開けてびっくり。ブルーグラス仕様で聴いてみると、LPに何の違和感も無く馴染んでいる。ラストはデキシーの大御所薗田憲一のトロンボーンも冴え渡る”Sunshine California”で幕。お茶目なジャケも印象的な本盤、再評価が必要か。