(Polydor 24 4061 / 1971)
冒頭の名曲A-1”As Long As She Will Stay”を一聴して、同時期のBarry Mannを想起せざるを得ない、ビターヴォイスのピアノマン。SSW期の幕開けを象徴するJ.Taylor ”Fire And Rain”のカバーも実に渋い仕上がり(A-4)。ジュリアードでオーケストレイションを学んだというこのスキンヘッドの男、ポピュラー界に名を馳せる作詞家Sammy Cahnの紹介によりPaul Ankaのピアニスト兼共作者として雇われたのが成功の契機。シナトラに聴かせる前の”My Way”のデモに命を吹き込んだのも彼だ。A-2”Alice Blue”はベーシストDon Payneのファンキーな作品だが、ソウルフルな歌声にマッチしている。ソウルポップB-5”I’m Gonna Be Somebody”も歌えている。そうえいばこの人、”Taste of Honey”の作者としても知られるBobby Scottなんかともテイストが被っている。Teddy Randazzo作のピアノバラードA-3”Like A Muddy River”は感動的。もちろんBobby自身が手がけるオーケストレイションが、実に、効果的なのである。A-5”Don’t Know Where I’m Goin’”とB-3”Double Life”はPaul Ankaとの共作。恋人と別れて当ての無い気持ちを歌ったA-5はシンプルなバースの繰り返しながら、WebbやBacharachの風情あり。ジャングルブックで有名なKiplingの詩に曲をつけたB-1”A Song for Erik”はドラマティックな佳曲。B-3のほうは、マイナー調のイントロとメジャーのサビが大仰な印象を与える、Paul Ankaが歌えば、「らしい」曲。David Lucas作のB-2”Baby, You Just Barely Know My Name”はソウルっぽい出だしから徐々に盛り上げていくサビまで聴かせる。とにかくこの盤、バッキングは完璧だし、スタンダードの風格を持つ名バラードのオンパレード。あとはこのビターヴォイスの好き嫌いでこの人の評価は変わってくるのでは。Glen Campbellとのコンビネーションで一世を風靡したJimmy Webbの自演盤が比較的SSWよりだったのに対して、この人はJimmyよりソウルっぽいものが歌えるせいか、割とバッキングが豪華。ちなみにBobby、Polydorでもう1枚、さらに1982年には”Love Ballet” (Earth Audio Techniques 149)をひっそり出している。後者はクリアな音でメロウなバラードを聴かせる愛ある一品。AOR化後のDr.Hookに提供し、大ヒットを記録した”A Little Bit More”の自演や、さきに紹介した”A Song for Erik”の再演もある素晴らしい出来。また、90年代、00年代にも自らのレーベルBygosh Musicから諸作をリリースしており、集大成的な”Love Stories”(2001)は必聴か。ふくよかなエコーが耳なじみをより良くしている。