/ Same ( A&M SP4839 / 1980 )
ジャケからするとたいしたことない産業ロック盤のような気がするのだが、スタンダードな楽曲につられ、たいして期待せず買ってみたところ、曲も粒ぞろいな実に渋いブルーアイドソウル盤だった。Dean Cohnという人はよくわからないが、1980年という時代を考えると、心持ち明るめに仕上がってはいるものの、B.J.Thomasなんかが70年代にやっていた南部ポップソウルの雰囲気を80年代に再現した感じで、とにかく渋過ぎる。ソングライターもソウル/カントリーを横断したやり手ばかり。音作りも明るめではあるが、最後の生音時代を満喫できる。
A-1”When You Get Right Down To It ”はBarry Mannのあの曲ではなく、Jerry Fullerのカントリーソウルバラード。青臭い部分もあるが、印象的な甲高いシャウトも交えつつ丁寧に歌いこむ。Thomas CainとClifford Curryの共作 A-2”Crazy In Love”は、ソウル魂満点のマイケル・ボルトンが歌いそうな90年代〜00年代王道アダルトコンテンポラリーの風格。でも音は生なのが実に耳にいい。相当いい感じだ。アレンジャーのBergain Whiteがいい仕事をしている。A-3”I Could Be So Good For You”はキャッチーなポップソウルでAORファンにもアピールしそう。Alan Rush、Dennis Linde、Randy Cullers...という共作者を見ていたら、これはJubalではないか!と思い出した(Rob Galbraithさんはいないものの)。A面ラストはスタンダードA-4”Since I Fell For You”。重厚さはないが、さわやかに聴かせる。さわやかな歌でもないが。
B面一曲目”We Should Be Together”も出来たミディアムバラード。Thomas Cainと、Billy Swanの諸作でギターを弾いていたTim Krekelの共作。B-2”One More Last Chance”はナッシュビルのソングライターHal Bynumと、Billy Joe RoyalやBrook Benton、Dobie Gray、Gladys Knightに曲を書いているBud Reneauが手がけたポップな曲。さらにB-3”We’re In This Love Together”は弾むようなフックのリフを持つかなり好感触なポップソウル。カントリー畑でプロデューサー、SSWとして活動するKeith Stegallの曲だが、ブルーアイドソウル系AOR好きには相当たまらない感じだろう。B-4”When A Man Loves A Woman”は一転スタンダードなソウル名曲。有名曲なだけに力みがあり、オリジナルのPercy Sledgeの下手っぴだが温かみのあるボーカルとは程遠いが、コンテンポラリーにソウルをさらりと料理している本盤の流れ的には全然悪くない。むしろ、ラストのバラードB-5”Nothing Could Ever Stop Me (From Loving You)”の方が曲に魂を込めて歌えていて良い。この一曲のみThomas Cain、Tim KrekelとともにDeanもクレジットに名を連ねている。
とにかく素晴らしい。曲のレベルが非常に高いだけに、要注目盤だ。中身とそぐわないジャケットゆえ100円箱に転がっていそうな雰囲気(実際転がっていた)なので、拾い上げる必要がありそう。