/ Prisms (Shelter 52005 /1976)
Debbie LyonsとPam Clarkのフィーメールデュオによる名作。銀色のジャケットが目を引くが、ジャケット通り実にドリーミーな出来。プロデュースはアクースティック作品に独特の手触りを持たせる売れっ子David Kershenbaum。全体的にアクースティックな作りだが、Tom Scottの管楽器も入り、AOR風っぽさもある、昼下がりには実に気持ちの良い音。演奏陣は完璧で、Lyons & Clarkのアコギに加え、Larry Carlton、Wilton Felder、Steve Gadd、Ralph McDonald、Joe Sample、Michael Omartian、Paul Griffinなどなど。B面にはJeff Porcaro、Dave Hungateといった後にTOTOを結成する西海岸の腕利きセッションメンも参加。
まずイントロA-1、Debbie Lyons のピアノに合わせたTom Scottのソロからしびれる。A-2”I Thought I Would Cry”からはボーカルが入るが、これが実に細く繊細で綺麗なハーモニー。ハイトーンにはジョニ・ミッチェルを思わせる箇所も。A-3のタイトル曲はTom Scottのクラリネットからして実にリラックスした出来で、Paul Simonが東海岸で作ったアルバムに入れてもおかしくない感じ。やはりフォークのソウルポップ・ジャズ化というのがこの作品の色合いか。A-5”Love Lines”はカントリーバラード風だが、上記の布陣もあって洗練された響きに。さて今度はB面、1曲目の"No Deal"はWilton Felderのベースが目立つソウルっぽい仕上がり。なかなか。B-2”Keepin’The Heat Down”はアコギのチャリチャリしたカッティングがすでに良い。Pamのバンジョーも入るが、ちっともカントリーっぽくない。リズム隊はTOTO結成前のJeffとDavidの二人。B-3”Sweet Misery”はブルーズフィーリングもちらり。こういった泥臭いフォークあるいはブルースっぽさがこの人たちの素なのだろう。ラスト前のB-5”Penny Jar”を聴いてもそう思う。しかし、その素地を取り巻く贅沢な演奏陣とそのメロウなマッチングの奇跡は音楽ファンならば必聴だろう。ちなみにDebbie Lyons、ちょっと太くなった歌声で近年もTime Released (2001)を残している。