*[カセットテープ] カセットデッキ再び
音楽に興味を持つようになった小学生から高校生ぐらいまで、一番親しんだ音楽メディアはカセットテープだった。ベスト選曲のカセットとか作りましたよね。あの作業も今思えばある種の編集力だったような。プレイリスト作りよりも時間の制約があるのが面白かった。ノーマル、ハイポジ、メタルとかもありました。最近そんなカセットの魅力をまたまた追求している所。中目黒のカセット専門店ワルツとか、BEAMSでのレストアされたカセットデッキ(ラッパーが肩で担いでいるみたいなやつ)販売とか、しばらく話題にもなってましたが。
しかし、本当の意味でのカセットのアナログな真価を体感するには、ちゃんとしたデッキを買う必要がある。デッキで再生したカセットテープの音は結構ビビります。「デジタルは音が良い、アナログは音が悪い」というのは進歩主義・資本主義的差別化に踊らされた一つの思い込みだったとわかる。カセットはレコードの音とは似たものがあるけれど、デジタルとはまた別次元。しかし国内メーカーの新品カセットデッキはもはや手ごろなものがないから、音質というよりも若い世代にはちょっと面白いガジェットといった体で消費されているのが少々残念。アナログ保全の雄、TEAC/TASCAMが辛うじて新品を扱ってはいるけれど、もはや需要が少ない今では高利薄売4~7万と高価だし、モデルによっては在庫処分の趣もあって、もはや風前の灯火。海外で作ったおもちゃみたいなウォークマンまがいの簡易プレイヤーはアマゾンで売ってますが、すぐ壊れます。音も「再生できました」という程度。
そうなるとヤフオクなどで、取り扱っているリペア業者から買うというのが一般的な入手方法になる。ジャンクを買って、トータルでリペアして出品する個人や業者が大勢いる。評価の数で判断してほしいけれど、良い仕事をしている人がいる。カセットやCDプレイヤーは特にゴムベルトが必ず経年でダメになるから、トレイや再生の不具合で必ずいつか壊れてしまう。あまりに古いとモーターの回転数も狂う。先日、5年前に買った愛用のONKYOのデッキ(これもリペア品だったけど)が壊れて買い直したから、手元にあるのは3代目のデッキになる(ちなみに壊れたものはジャンク出品すれば一瞬で売れる)。リペア業者からは1980~90年代の日本のオーディオ全盛期の高品質のものが1~2万円前後で入手可能。基盤や重さ、素材をみるだけでわかるけれど、工場が海外移転してマレーシアとか中国メイドになる90年代後半から質が落ちていき、カセットの時代も終わっていくという。もちろん以後は日本と海外の技術力・生産力は逆転していく。悲しいけれど、日本のモノづくりの栄枯盛衰を見るような。
先日入手したのはリペア済みのSONY最後のカセットデッキTC-WE475(2001年から2011年まで生産)。2つ壊れるまで使えるという見込みでダブルデッキを選ぶ。しかし手に取ると、思った以上に軽い、、、やっぱり天下のSONYも最後は中味スカスカなデッキになってしまっていた。音も水平トレイ式シングルデッキの方が流石に良かったけれど、それでもドルビー再生可能、安定した再生がなされて、一定のクオリティはちゃんと保たれていてホッとする。何より頑丈そうなのが良い。ガチャッと手動でトレイを閉めるのも懐かしい感覚。
1997年に日本先行リリースが決まったエリック・カルメン(当時、1984年以来13年ぶりのニュー・アルバムだった)のサンプル・カセットを聴いている。曲順や曲数は異なっている。音はCDからテープに落とした時の、あの柔らく心地よいカセットの音。高校生の頃、高田馬場の中古盤屋タイムにて、CDのサンプル盤中古もお金が無くて買えず、サンプル・カセットをよく買っていた。
思い返せば、エリック・カルメンと同じくビーチ・ボーイズの影響色濃い大滝詠一も、1984年の『イーチ・タイム』以来リリースは沈黙し、1997年の”幸せな結末”で奇跡の復活を遂げていたことを思い出す。ラズベリーズとはっぴいえんど、というバンドマン出身だったのも似ていたような。