*['60-'70 ロック] John Sebastian and Arlen Roth / Explore The Spoonful Songbook ( BMG /2021 )
ヨーロッパではまた感染拡大が心配されておりますが。そんな中でもコロナ禍を抜け出した新譜やら再発やらがここへ来てドドっと出てきていて。搔き集めているけれどとてもじゃないけれど耳が追い付かない。なんだかんだよく聴いているジョン・セバスチャンとアーレン・ロスの共演盤『Explore The Spoonful Songbook』を。コレ、CDで入手してみたけれど、LPで買えばよかったかな。まだ間に合うか。
ジョンと言えば、30年前くらいからボーカルが取れなくなったとか、色々言われていて。フリッツ・リッチモンド・トリビュートで来日したときに、その意味はわかったのだけれど、今作では結構歌ってるんですね。でももはやここまで来ると、”ラヴィン・スプーンフル”のネタ元であるミシシッピ・ジョン・ハートの領域に達していて。どうにも和む最高の唄声に思えてくる。そして今作の相方アーレン・ロスと言えば、ウッドストック・マウンテン・レヴューでもお馴染みのグッドタイム・ミュージックをやらせたら最高のギタリスト。ストリング・ベンダーの名手でもある。彼のセカンド『Hot Pickups』を初めて聴いた時は、間違いないと思いました。ジョニー・リヴァースの”Poor Side Of Town”とかパーシー・スレッジ”When A Man Loves A Woman”、ロイ・ヘッドの”Treat Her Right”なんかが入っていて、この人分かってるな、と感心してしまった。
で、今作はそのアーレンが企画したアイデアなんだとか。ストーンズやサイモン&ガーファンクルのトリビュート作をすでに作っていて、知り合いだったジョンに満を持してスプーンフル・トリビュートを提案したようだ。アーレンは幼い頃からのスプーンフル中毒だったらしいので、元アレンジも頭にしっかり入っている、しかもスプーンフルのギタリストだったザル・ヤノフスキーのユーモアと精神をちゃんと理解している人だったということ。この辺りがジョンの心を動かし、本プロジェクトをスムースに進行させることに繋がったのだろう。ゲストはジョンとの共演歴もある60年代トリビュートな音楽活動をしている若手の双子モナリザ・ツインズ、そしてイーヴン・ダズン・ジャグ・バンド以来の盟友ジェフ・マルダー、そして彼の元妻マリア・マルダー(マリアの2009年作にもジョンはデヴィッド・グリスマンやタジ・マハール、ダン・ヒックスらと共に参加している)。ジョンが歌って絶品のハープを吹くラストの"Darling Be Home Soon"が白眉だろうか。”Daydream”や”Do You Believe In Magic”が歌モノでないことに失望する人がいるかもしれないけれど、個人的には歌が聴こえてきました。いやこれ、歌心のあるすごい演奏だと思いますよ。
曲目でもう悶絶。
- Lovin' You
- Darlin' Companion
- Daydream
- Jug Band Music
- Four Eyes
- Younger Girl
- Rain On The Roof
- Didn't Want To Have To Do It
- Did You Ever Have To Make Up Your Mind?
- Do You Believe In Magic?
- Nashville Cats
- You Didn't Have To Be So Nice
- Stories We Could Tell
- Darling Be Home Soon