*[ロック] Jo Jo and The Real People / One By One (Polydor / 1987)
トニー(アンソニー)&クリス・グリフィス兄弟を中心とするリヴァプール出身のバンド、ジョジョ・アンド・ザ・リアル・ピープルが1987年にリリースした、2枚目となる45回転の12インチシングル『One By One』(B面は”Hurricane”、”All Dried Up”の2曲)。個人的にこのバンドに注目したのは、まずシェールが1996年に、マーク・コーンの”Walking In Memphis”のカバーに次ぐシングルとしてリリースし、小ヒットを記録したこと。死ぬほど良い曲だと思った。
考えてみれば、シェールが取り上げる9年前にリリースされた曲だったということになる。ちなみにこの頃のジョジョ・アンド・ザ・リアル・ピープルは打ち込み的なエイティーズのビートの範疇にあり、ソウル感覚さえも持ち合わせていた。
2枚のシングルをリリースした後、1991年にリアル・ピープル(The Real People)と名を改めて、コロンビアから同名盤『The Real People』にて、いわゆるUKロックの文脈で再デビューすることになる。ここで触れておかなくてはならないのが、ノエル&リアムのギャラガー兄弟が結成したオアシス。ビートルズをルーツとするUKロックバンドの一つとして90年代に一世を風靡したわけだけれど、果たしてノエル・ギャラガーは何を手掛かりに自身のソングライティング・スタイルを築き上げたのか…当時さほど語られていたように思えないが、そのモデルとなったのが、同じ兄弟がメンバーとして在籍したこのバンド、リアル・ピープルなのだった。どうもギャラガー兄弟は、同じ兄弟バンドで先にデビューを掴んでいたトニー(アンソニー)の手ほどきで、デモの作り方やソングライティング、売り込みのイロハを学んだらしい。1993年にリヴァプールでレコーディングされたそのデモでオアシスは契約を勝ち取った。
オアシスのデビュー・アルバム『Definitely Maybe』に収録された”Supersonic”にトニー(アンソニー)がコーラスで参加していたのは、デビューへと繋いでくれた先輩への一種の敬意だろう。クリスも”Roll With It”のカップリングだった”Rockin' Chair”(アルバムでは『The Masterplan』収録)でノエルと共作している。しかし時代の寵児となったなったオアシスとは対照的に、リアル・ピープルは不遇だったと言わざるを得ない。レコーディング済みだった2作目(なんとローリング・ストーンズで知られるジミー・ミラーのプロデュース)がSonyがCBSを買収するタイミングで契約解除と相成り、自主レーベルeggでのシングル・リリースを余儀なくされた。1996年に日本のSonyが、その辺りのシングルをまとめて『Whats On The Outside』としてリリースしてくれたのは、せめてもの救いだった。
アイスランドの女性4人組のナイロン(Nylon)が2006年にヒットさせた” Closer”。これはリアル・ピープルの未発表曲のカバーだったけれど、その貴重なリアル・ピープル版をYouTubeで聴くことができる。
オアシスのソングライティングに何をもたらしたのか、それは一聴すればわかる。彼らは2016年に今のところの最新作『Monday Morning Breakdown』をリリースしている。こんなしぶといバンドが大好きだ。