いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Eagles / Live From The Forum MMXVIII

*['60-'70 ロック] Eagles / Live From The Forum MMXVIII (Rhino / 2020)

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11月3日のアメリカ大統領選挙前というタイミングで、リベラルなアメリカン・ロック大御所の快作が。ブルース・スプリングスティーン『Letter To You』イーグルス久々の新作ライブ『Live From The Forum MMXVIII』。2016年にグレン・フライが亡くなった時、ブルースは”Take It Easy”をライブでカバーした。この2作を買って以来、一日一回聴いている。個人的にはどちらも最高だったということ。ただ、苦言を呈するならばイーグルスのDVD付の3枚組日本盤は高すぎる。天下のイーグルス様ならどうせ買うんでしょ、と言わんばかりの価格設定は末期的なレコード会社の苦境を思わせる。マライア・キャリーのDVD付の『レアリティーズ』ってのも足元見てるなあという価格。手が出ちゃうんですけどね。ちなみにイーグルス、私は輸入盤を取り寄せて2000円台で入手。対訳などじっくり味わいたいなら国内盤、ということになるだろう。ちなみにブルースの新作は値段的にもちろん国内盤を選びました。

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で、イーグルスのライブは2018年9月12・14・15日の米カリフォルニアのLAフォーラムでの再結成公演を収めたもの。「MMXVIII」はローマ数字で2018。すでにYouTubeでは確認していたけれど、パッケージで聴けるのはやはりうれしい。グレン・フライの穴を埋めるのは、グレンのまだ20代の息子ディーコン・フライと、百戦錬磨のカントリー・歌手、ギタリストのヴィンス・ギル。ヴィンス・ギル入れるのは反則(笑)ハーブ・ペダーセンの如く、誰もがプレイしたがる人だと思う。

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ジョージ・ハリスンの息子ダーニのような父親ソックリ容姿のディーコン、声量はもしかしてグレンより上じゃないかと思ったけれど、意外なほど歌わせてもらえていない。お披露目の様子見でもあったのかな。初っ端の”Take It Easy”ではその存在感を見せつけていたし、グレン愛用の古いタカミネのエレアコを持つシーンも。それ以外はイーグルス2007年の28年ぶりの再結成作のファースト・シングルで、J.D.サウザーのファーストのカバー曲だった”How Long”とか(”たどり着いたらいつも雨ふり”みたい!)、ジャック・テンプチン作の”Peaceful Easy Feeling”とか、その辺を歌っている。正直ディーコンに歌ってほしかったヘンリー/フライやマイズナーの曲はヴィンス・ギルが持っていくという。もしかして親の曲は比べられるから歌いたくないのかも…。

 

まあしかし、今回の曲目を見てもわかるけれど、イーグルスというバンドは初期は余り良いオリジナル曲が書けなかったこともあり、色々な才能を見つけてきては金に換え、自我が出始めたら切り捨てるという…ドライで商魂たくましい側面もあった。J.D.サウザーもそうだし(なにしろ”How Long”をカバーした時でさえJ.D.に連絡の一本も来なかったという)、ジャクソン・ブラウン、ジャック・テンプチン、ロブ・ストランドランド、ボブ・シーガートム・ウェイツ…メンバーとなったランディ・マイズナー、ポコのティモシー・B・シュミット、フロウのドン・フェルダー、ジェイムス・ギャング~バーンストームのジョー・ウォルシュもしかり。だから今回、ピュア・プレイリー・リーグほか様々なバンドでプレイし、ソロ歌手として全米No.1ヒット(”Don’t Let Our Love Start Slippin’ Away”をイーグルス版で披露!)も持つヴィンス・ギルを入れたことは実力主義アメリカ的合理性の為せる業か。それでも結成以来のメンバーがドン・ヘンリーのみでは寂しいという理由なのか、グレンの血脈に頼りディーコンを加えた再結成…右も左も何やら確かなものにすがるほかない国情にあるのかと邪推する。

 

ドン・ヘンリーもちょっと見た目お爺ちゃんにはなったけれど、声は衰え知らず。ソロの”The Boys Of Summer”、そして”Hotel California”、”Desperado”…ベタだけど、泣いちゃいましたね。そして後期イーグルスハード・ロック的な重たさを注入したジョー・ウォルシュは、想像通りパワフルなクレー爺になってます。彼やドン・フェルダーなしでは、70年代後半までバンドを延命することは不可能だったと思うけれど、個人的には初期のバーニー・リードン在籍のカントリー・ロック時代が大好き。グレン存命の2013年のリユニオンツアーにバーニーが参加できたのは、今となっては幸せな瞬間だった。

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