*['60-'70 ロック] Blue Rose / Same (Epic / 1972)
60年代や70年代のレコードを中心に聴き続けているけれど、まだまだ知らない盤がある。70年代初頭のエピックは1枚きりの無名バンドのレコードを沢山出していて、その殆どが当たり、ということに最近気がついた。これもそんな一枚で、ブルー・ローズというバンドのレコード。「青いバラ」ですから「存在し得ないもの」の喩え。このバンドの実態は、ソングライターのテリー・ファーロングがLAのセッションメン、レッキングクルーの流れを汲むマイケル・オマーティアン(本盤ではマイク・オマーティアン名義)と共に作り上げたソングライター・デモのようなものにも思える。A面1曲目の”My Impersonal Life”というのが本当に素晴らしい楽曲で、スリー・ドッグ・ナイトが1971年のアルバム『Harmony』の2曲目、”Never Been To Spain”と”An Old Fashioned Love Song”の間に挟まれて収録されていた。テリー・ファーロングの楽曲はブルージーでソウルフルでありながら、メロウなLAポップスの伝統に加えたもので、70年代初頭のスワンピー・ポップの王道をいくもの。スリー・ドッグ・ナイトに採り上げられたのも頷ける。演奏にはハーヴィー・マンデルが熱いソロを弾いている曲もあり、ジム・プライスのレコードで演奏していたベースのジョン・ユーライブのクレジットも。その他のバンドメンバーにはゲイリー・ニコルソンやジム・エド・ノーマンとアンクル・ジムズ・ミュージックを組んでいたドラマーのゲイリー・ステュ(ロジャー・トロイのジェリーロールのメンバーでもあった)もいる。アコギと分厚い弦とコーラスで綴られる”Chasin’ The Glow Of A Candle”はスプリングスティーンが新作でやろうとしたような、ある種エキセントリックなLAカルト・ポップスだと思う。