いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Jimmy Webb / Ten Easy Pieces The Deluxe Edition ( Friday Music / 2018)

markrock2018-11-11




久々の更新。レコードもライブも色々盛り沢山な今日この頃で。10月27日はご本人から直接お電話頂いたもので、行かないわけには!とばかりに、私のファーストでアレンジをして頂いた(第二、第三の円熟期を迎えておられる)佐藤龍一さんのライブat大森・風にふかれて。3時間以上にも及ぶ30曲歌いまくりのステージで。お客さんの熱気も素晴らしかった。ファーストのプロデュースを引き受けてくださった金谷あつしさんにも本当に久々のご挨拶をさせて頂いたり。そして31日はモチロン、東京ドームのポール・マッカートニーへ。約2万円のチケットが一寸高すぎるな、と思ったのは自分だけではなかったようで、しかも最後ではなさそうだ、と思ったファンも多かったのか、ちょこちょこと空席もあったのは今までになかったこと(そのせいか、4回目の今回が一番席が良かった)。とはいえ、ドームをほぼ超満員にしちゃうのは、やっぱりポール。こちらも3時間以上36曲のステージ。当初ちょっと見た感じお爺ちゃんぽくなったかな、と思ったり、”Live And Let Die”で珍しく声が上ずったりもしたのだけれど、76歳ですよ…。正直自分がこの年になったときに、人前で3時間以上も立っていられる自信がない。”From Me To You”を初めて聴けた喜びもあったし、新作『Egypt Station』からの楽曲が流石にこなれていたしフレッシュだった。歌わなかったけれど、”Despite Repeated Warnings”での温暖化に聞く耳を貸そうとしない狂った船長ってのがトランプだと気付いてからは、ますますポールが好きになっている所だ。そういえば、ドームの外に立っていたら、突然ビートルズ世代のお爺ちゃんがですね、私の肩を叩いてきまして、「ジョン好きでしょ?言わなくてもわかるよ〜」とおっしゃって立ち去って行かれました。

で、ジミー・ウェッブの旧作のデラックス・エディションを。愛蔵盤LPとかデラックス・エディションなんかを出しているFriday Music(https://fridaymusic.com/)から、4曲のボーナス・トラックを加えて待望のリリース。ホームページで先行で買うとサイン入りコースターが付いてくるだとか、あったんですが、アメリカからの送料込で5000円を超えるということであきらめる。そうしたら日本でも輸入盤が入荷しまして、マルチバイのディスカウントを使って2000円くらいで入手できた。日本盤が出る気配は今のところない。


ジミー・ウェッブで一番好き、というかシンガー・ソングライターの自演盤で一番よく聴いたんじゃないかな。1996年にリアルタイムで買いました。高田馬場の今は亡きレコファンで。まだ学生服を着ていた頃でしたが。元々はガーディアンというレーベルで、トッド・ラングレン、クリス・クリストオファスン、バリー・マンアリス・クーパーの自演盤を出していた。ジョーン・バエズキンクス(レイ・デイヴィス)もあったかな。でも、もう潰れちゃったみたい。ジミーの音源も流出したらしい。プロデュースのフレッド・モーリンも、かつてダン・ヒルなんかのプロデュースをやっていたカナダの人だけれど、今では業界で結構偉くなっちゃっている。


ジミーがピアノとボーカルというシンプルなアレンジで、グレン・キャンベルアート・ガーファンクルドナ・サマーフィフス・ディメンション、ブルックリン・ブリッジ、リチャード・ハリスジョー・コッカーフランク・シナトラ…なんて人達に歌われた、アメリカの良心とも言える代表曲を歌いつづる10の珠玉のピーシズ(タイトルの『Ten Easy Pieces』は夢の中に出てきた愛する母のお告げだったんだとか)。ライナーを読んで知ったけれど、当時のジミーは離婚の只中にあって、過度に酒を飲む日々だったそう。プロデューサーのフレッドの後押しとレスペクトに支えられた作品だったのだと思う。そしてジミーにとっても、自身の歌声と向かい合い、自分の楽曲でありながら、オリジナルをある意味で超える作品を作り上げる挑戦だったのだと思う。実際、その後は弾き語りのツアーを精力的に行っていくことになる。マイケル・マクドナルド、ショーン・コルヴィン、マーク・コーン、スーザン・ウェッブといったゲストの参加も本当に絶妙。タイムレスな名盤と言うのはこのような作品を指すのだろう。

ちなみに音はオリジナルCDと変わらぬ、ピアノの広いレンジを表現した素晴らしいものだった。あと、注目のデモは”Galveston”、”Worst That Could Happen”、”Up, Up And Away”、”I Was Too Busy Loving You”という4曲の完全弾き語りテイク。途中演奏をやめたりする箇所もあるんだけれど、そこはレコーディングのアウトテイク、アレンジの作り込みの過程における未発表音源という雰囲気で聴きたい。 ”I Was Too Busy Loving You”は2010年の『Just Across The River』(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100712)でも再演していた。やっぱり皆が待っていたのは”Up, Up And Away”でしょう。この時すでに、ライブでジミーが演る際の例の定番アレンジで披露されていたことがわかる。


あと、まだFriday Musicのサイトには出ていないけれど、CDケースの内側には180gオーディオファイル・ヴァイナルでのリリースが告知されている……なんと……夢ではないですよね??