いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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鈴木慶一/ダニエル・クオン「Aerial Garden Sessions vol.2」

markrock2018-10-20


10月18日の鈴木慶一さんのイベント「Aerial Garden Sessions」。vol.2のゲストは奇才SSWのダニエル・クオン(http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/9241)!ダニエルくんはレコード仲間でもあり、アルバムのジャケット・デザインでもお世話になっている。てなわけで、下北沢の風知空知に潜入。会場は入りきれないくらいのお客さんで賑わっていた。前半はダニエル、休憩を挟んで後半は慶一さんのステージ、40分ずつと聞いていたけれど、それぞれ1時間くらいだったかな。そして最後の二人のセッションを含め、3時間近くに及ぶ充実したステージになった。

ダニエル・クオンのライブは久々に見たけれど、弦を全く張り替えていないというギルドのアコギを抱えての巧みなフィンガー・ピッキングによるインストに始まり、ファースト・アルバムからの"A Tiger's Meal"や2015年の名作『ノーツ』からの"Judy"が飛び出すというグレイテスト・ヒッツ的選曲。ここのところエクスペリメンタルなインストに興味が移っているようだったけれど、ちゃんと代表曲を網羅し、初めて聴くであろうオーディエンスをも魅了していた。慶一さんが悲しげな、と確か形容していたそのボーカルはライブでも印象的だった。そしてカルトSSWのようなサングラスを纏い、シャイなつぶやきシローのごときMCもユーモアのあるものだったし、”Judy”で「助けて!」と客席にシングアウトを求めるシーンでは、それに応じるオーディエンスの温かさが印象的だった(さらに突然ビートルズの"Fool On The Hill"を奇妙なメロディで歌い出したのは意表をついていた)。後半はピアノにチェンジし、長尺のエクスペリメンタルな音の洪水を作り出す。ラストまで、緊張感のあるステージだったと思う。


そして慶一さんパートはご本人が新曲の反応を試す、なんておっしゃっていたけれど、新曲、映画の挿入歌(アウトテイクまで!)も含めて、ギター、打ち込みのシーケンサーエフェクターを交えて、個性的でマジカルなサウンドを作り出していた。個人的にはソロで聴いてみると、ムーンライダースとはまた違い、シンガー・ソングライター的な噛みしめるような語り口が印象に残った(”Backstage Pass”は素晴らしかった!)。そしてやはり特徴的な声の抑揚が耳を離れなくて。『マニア・マニエラ』収録の” 花咲く乙女よ穴を掘れ”はオーディエンスとシング・ア・ロング!そして、最大級の賛辞とともに「ダニエル・クオン!」と声がかかり、二人のステージへと雪崩れ込む。20分にも及ぶインプロヴァイゼーションの応酬は、たまたまステージ近くで見ることができたからわかるけれど、互いの出方を伺いながら、音を繰り出す緊張感のあるもので。そしておもむろにダニエルが再びアコギに持ち替え、慶一さんはギターからピアノに変わって"Blackbird"を演るという。ただただ、しびれましたねぇ。先ほどの"Fool On The Hill"といい、ダニエルのポール愛も感じられて。


アンコールは「慶一さんはなぜこの曲を選んだんですか?」なんていうダニエルの質問とともにダニー・ウィッテンの"I don't Wanna Talk About It"を、日本語ではなく英語詩で歌ったのも良かった。この曲とか"It's Not The Spotlight"なんかは70年代の日本のミュージック・シーンにおいては、特別な意味合いをもっていた。


終演後の打ち上げでロニー・レインのTシャツを着た慶一さんやダニエル君、慶一さんのスタッフの方々と色々話をさせて頂いたのだけれど、慶一さんの優しい笑顔でほのぼのとした気持ちになった。また慶一さんは、素晴らしいスタッフの方々に支えられているのだと気が付いた。慶一さんには音楽の始まりはピアノではなくギターだったこと、ヴェンチャーズやアストロノウツに感化されたことを伺った。あがた森魚さんとの出会いについて聞いてみたところ、お母様の職場にあがたさんがおられたんだとか。そんな偶然(必然?)ってあるものなんでしょうか。個人的には慶一さんの歌いまわしやメロディに時々あがたさんがシンクロするような気がしていた。一番似せたくないんだけど…なんて笑っておっしゃっておられましたが。あとは私の住んでいる東京・三鷹についてのマニアックなエピソードも。なんでも、吉祥寺いせやの主だった高田渡さんは生前「都立三鷹高校のサッカー部は俺が作った」と豪語していたんだとか。でも、その場で慶一さんが携帯で調べてみたところ、出身校は都立市ヶ谷商業の定時制…いやはや噂通り、渡さんの虚実入り混じった感じが何とも。兎にも角にも、素晴らしいライブと素敵な時間で幸せな気持ちになれた。


そう、会場ではダニエル・クオンの新作CD-R『Lites Out』の販売も。”Lites Out”、”Little Koalas”、”Eskimo Kisses”、”If You Feel,You Heal”の4曲を収録。元・森は生きているの増村和彦のドラムスも加わった音。ポップでとても良かった!