いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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スティーヴ・タイレルとバリー・マン

markrock2017-06-01



気付けば6月に入りまして。哲学本作りに殆どの時間を注力している日々。締め切りも延びているから頑張らないといけない。日本・西洋・東洋と基本文献はほぼ網羅したいと思ったので原典を一から読んでいるけれど、ものすごく時間がかかる。とりわけ自分の得意としない哲学者の本をずっと読むのって、余り好きでもないミュージシャンのレコードをずっと聴くような辛さもある。その一方、好きな人について語ると色々と言いたい事が湧き出てきて、結局は時間がかかってしまう。日本でいうと丸山眞男は改めて凄いと思い知りました。そしてまた50年前の日本も今と全く変わっていないということを再認識した次第。


あと先月は古くからの友人の監修で新世代のフォーク・ミュージックについてのムックが出るとのことでレビューを幾つか書かせてもらった。こちらは大好きな日本のフォークの聴き直しが出来て、楽しかったなぁ。細野晴臣とデヴェンドラ・バンハートのインタービューも入るそう。芽瑠璃堂さんのHPでもインフォメーションが出ていました。また詳細がわかれば。

そう、7月にバリー・マン&シンシア・ワイルの『プライヴェート・トレジャーズ(Original Demos, Private Recordings And Rarities)』(http://merurido.jp/item.php?ky=VSCD3954)っていうレア音源集が出るそうじゃないですか!これは流石に楽しみ。個人的にはバリー・マン、ジミー・ウェッブ、ポール・ウィリアムスってのがソングライターの神様。ジミー・ウェッブといえば先日『The Cake And The Rain』っていう1955〜73年のウェッブの全盛期のキャリアを含む回顧録が出版された。ちびちび読んでいるけれど、何よりビックリしたのが巻末のディスコグラフィ。ソングリストはまあいいとして、映画やミュージカルへの提供曲リストが付いていて。サントラも出ていない(フィルムもあるのかないのか?)全く知らない映画もあって、脱力しました。個人的にはウェッブのキャリアを執念深く追いかけてウェッブ関連作も含めて集めてきたんですが、もうこれは叶わない…と思いました(笑)。

で、バリーの方は並み居るヒット曲の90年代までの自演。一部デモ・シンガー(なんとジェイムス・イングラム)が歌うものも。初回限定のボーナス・ディスクというのも凄くて、速攻で予約してしまいました。バリーのシンガーとしての実力は折り紙つき。ハンソンの”I Will Come To You”は流石に入っていないようだったけれど、これもデモが存在するのなら聴いてみたかった。

ということで今日はスティーヴ・タイレル『That Lovin’ Feeling』で我慢しよう。ちなみにスティーヴは元々歌手志望だった。手元にフィリップスから1963年に出たシングル「A Boy Without A Girl/Young Boy’s Blues」がある。これは元はテキサスのヒューイ・P・モーの短命レーベルCapri Recordsからリリースされたもの。”Young Boy’s Blues”はフィル・スペクターとドク・ポーマスの共作名義でベン・E・キングが歌った曲。スティーヴは結構力んで黒っぽく熱唱している(ただ歌声は若いといえば若い)。その後スティーヴは裏方に転じ、セプター・レコードのA&Rを務めてB.J.トーマスやディオンヌ・ワーウィックを、ニュー・デザインではバリー・マン『Lay It All Out』を、そしてベル・レコードではマーク・ジェイムスを手がけた。スティーヴがシングルを出したCapriはB.J.トーマスの初ヒット” I'm So Lonesome I Could Cry”を出していて、そんなことからセプターのA&R時代のスティーヴが権利を丸ごと買い取ったみたい。

さてそんなスティーヴは燻し銀の歌声が90年代に突如再評価され、ジャズの世界でヒット作を沢山出した(以前のレビュー参照→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20080815)。真正のジャズ・ボーカル・ファンには受けが悪かったのを覚えているけれど、私はスワンプを聴く様な気持ちで聴いて最高だと思いました。スティーヴのアルバムは日本盤がしばらく出ていたけれど(バカラックのカバー集も日本盤が出た)ブリル・ビルディングのヒット・ソングをリメイクした2015年の『That Lovin’ Feeling』は業界の状況を反映してついぞ邦盤が出ずじまいで。

しかし内容は素晴らしく、キャロル・キングの”Jazzman”に”Up On The Roof ”、本家ビル・メドレーと歌うライチャスの”You’ve Lost That Lovin’ Feelin’”、ニール・セダカと歌う”Laughter In The Rain”もある。”Laughter In The Rain”は不肖わたくしも2015年のアルバムのタワレコ限定のボーナス・ディスクでカバーしました。で、貴重なのがバリー・マンと一緒に熱唱する”On Broadway”。すこぶる良い出来で。他にも”Any Day Now”、”There Goes My Baby”、”Stand By Me”、”Groovy Kind Of Love”、”Be My Baby”、”Chapel Of Love”、”Just a Little Lovin’(Early In The Morning)”…と黄金期のポップス・ファンのツボを突く選曲。数曲ではマイク・フィニガンが渋いバック・ボーカルをつけていて。

B.J.トーマスとデュエットしているバリー・マンの名曲”Rock and Roll Lullaby”はB.J.トーマスの2013年のアルバム『The Living Room Sessions』に入っていたものと同音源。こちらのB・Jのアルバムはポップ・カントリーでお馴染みのカイル・ラーニングがプロデュースしている。B・Jのホームページから買ったらサインが付いていた。B・Jってもうカナリのお爺ちゃんだけれど、ハンサムだし衰えず声が良いからか、ホームページでプロマイドとか売ってたりするんですね。全米のオバサマ方を今もメロメロにさせているのかしら、と。