/ Just Across The River ( E1 MUSIC / 2010 )
アマゾンで輸入盤が届いて以来、毎日聴いている。ジミー・ウェッブの新作だ。旧作を大勢のゲスト・アーティストと共に歌い継ぐというアイディアは、フレッド・モーリンのプロデュースということで言えば、ウェッブの『TEN EASY PIECES』のバリー・マン版『SOUL & INSPIRATIONS』みたいといえば判りやすいのだろうか。とはいえ、ナッシュビル録音でミュージシャンも現地調達、そしてウェッブ自身もピアノはほとんど弾かないでシンガーに徹した録音、となると、カントリー・ミュージック的な聴き方も出来てくる。
ウェッブの作品は、日本ではソフト・ロック的な文脈で随分評価されもしたけれど、彼のもう一つの本分はアメリカの大地に根ざしたカントリー・ミュージックの詩情であったりするわけで、彼の偉大なる友人でもあり、本作でも出世作”By The Time I Get To Phoenix”をデュエットしているグレン・キャンベルに多くのヒット曲を書き下ろし、その楽曲が今も愛されていることからもそれが窺い知れる。
嬉しい自演はアーロ・ガスリーに提供した”Oklahoma Nights”(ヴィンス・ギルとのデュエット)。ヴィンスとはウェッブも参加したブライアン・ウィルスン・トリビュートがきっかけとのこと。アーロの声質にこうした壮大なバラードは合わないと感じていたが、こちらは文句なし。そうそう、グレン・キャンベルの歌った”Cowboy Hall Of Fame”の単独自演もあった。
共演ではジャクスン・ブラウンと歌う”P.F.Sloan”に涙が出た…ジャクスンのいまなお青臭い声で、この曲の歌い出しが聴けるなんて…感動するほかない。
そのほか、ビリー・ジョエルとの”Wichita Lineman”、ルシンダ・ウィリアムスとの”Wichita Lineman”、マーク・ノップラーとの”Highwayman”(マークは ”By The Time I Get To Phoenix”でも印象的なソロを披露)、J.D.サウザーとの”It Was Too Busy Loving You”(これは弾き語りで『TEN EASY PIECES』の感触)、リンダ・ロンシュタットとの”All I Know”、新しい曲ではジョニー・リヴァースに書いたという、マイケル・マクドナルドとの”Where Words End”(歌詞にアルバムタイトルが登場)という夢のような顔ぶれ。 『Suspending Disbelief』に収録された名バラード”It Won’t Bring Her Back”は歌い込まれた再演、60年代の好バラード”Do What You Gotta Do”も嬉しい自演で。
“If You See Me Getting Smaller”は提供したウィリー・ネルスンと歌う。これまた歌詞の意味と相まって掛け合いが泣けてくる。アレンジはジョージ・マーティン・プロデュースのオリジナル自演を忠実になぞっている。
そうそう、ウェッブが1曲1曲語るライナーも、ゲストとの出会いや曲の逸話について知ることが出来て興味深かった。
正直恐る恐る聴いた本作だったけれど、十分楽しめた。ただ、やはり新曲を沢山聴きたいと思うのは欲張りだろうか。前作『Twilight of the Renegades』に収録された”Paul Gauguin in the South Seas”なんてロマン溢れる強烈な楽曲だったし。