/ It’s My Turn Now ( MCA / 1979 )
最近興味を持って集めているプロデューサー、ソングライター、シンガーのジェリー・フラー。元々南部のカントリー寄りのポップ・ライターが大好きだったので、この人の音はドツボそのもの。B.J.トーマス、バリー・マン、グレン・キャンベル、デニス・ランバート、マーク・ジェイムス、60年代後半以降のエルヴィスなんかにピンと来る人なら嫌いなはずがない音。リッキー・ネルスンの”Travelin’ Man”やゲイリー・パケット&ザ・ユニオン・ギャップの”Young Girl”、”Lady Willpower”といったヒット曲のライターとしてはアメリカン・ポップス・ファンにもお馴染みだ。ソウル・ファンにはアル・ウィルソンの一世一代の名曲”Show and Tell”(自身による二番煎じ”Touch and Go”というのもあるけれど)のライターとしても知られているだろう。
とはいえ元々はシンガーの出。チャレンジ・レコード時代の音は『A Double Life The Challenge Recordings 1959-1966』でたっぷり24曲が聴ける。音も良くて最高のコンピです。カントリーっぽい曲がメインかと思いきや、”Double Life”(1966年)をはじめとしたノーザン・ソウルものがあって驚く。最高に良い!ソウルフルな喉は絶好調ですよ。”Turn To Me”(1966年)はのちの”Show and Tell”ともつながるリフレインを持っていて、ブルーアイド・ソウルな後の作風の原型を感じさせるもの。ロックンロールな”Tennessee Waltz”やフォーク・ロックな”The Master Plan”なんかを聴くだけで、時流に合わせて音楽業界の荒波を潜り抜け、成功を掴み取ったことがわかる。
そんな成功の後にリリースされた初のソロ・アルバムが『It’s My Turn Now』。「今度は俺の番だよ」ってなタイトルが泣かせる。探してみると、行きつけの中古レコード屋フラッシュ・ディスク・ランチに300円のシールド盤があって。今までなんで気が付かなかったのだろう。内容としてはジミー・ウェッブ調の曲もあったりして、あの時代のポップ・カントリー好きなら堪らない音。曲も目立つものはないものの、粒ぞろいでリピートしてしまう。佳曲”Lines”はシングル・リリースされ、なんとかビルボード100にランクインしたみたい。
どうもCD化はされていないようで。探してみるとアメリカのレコード屋にシールドのカセットテープがあった。そうそう、最近よくアメリカの中古レコード屋でデッドストックのカセットテープを探して買っている。その魅力はというと…
1.未CD化のカタログがある。しかもノイズなし。
2.LPジャケを縦長にしたことによる強引なアート・ワークの妙。
3.A面、B面の制約下で作られた音楽をLP同様そのままで楽しめる。
ってな所。注意しなくてはいけないのは、古いと30年前くらいのデッドストックになるので、まれに開けたとたんカセット内の部品(再生テープを通す綿の部分とか)が取れたりすること。でも安ければ99セント、高くても5ドルくらいだから(未CD化タイトルで20ドルくらいのものもあるが)、それも楽しみの一つということで…
話を戻すと、ジェリー・フラー、80年代以降は目立った活動は見られないけれど、1998年に1960年から1998年までの楽曲をセルフカバーしたアルバム『Four Decades a songwriter sings his hits』をリリースしていて、彼のホームページから購入できる(http://www.jerryfuller.com/)。さきに挙げたヒット曲はもちろん網羅していて、素晴らしい喉も健在で必聴だ。
さらに、1959年から1989年(ピーボ・ブライソンによる”Show and Tell”も収録!)までのオリジナル・シンガーによる楽曲を詰め込んだプロモ盤『Jerry Fuller Songs 30 Years of Hits』というのも存在していて、ファンは海外オークションなどで探してみてほしい。さほど高いものでもないし。そしてそして、黒人ソウル・シンガー、アル・ウィルスンのアルバム『Show and Tell』はプロデュースした名作としてゼッタイに必聴でしょう!他にもO.C.スミス、グレン・キャンベル( 『Old Home Town』は名盤)、ジョニー・マシス、マーク・リンゼイのプロデュース作も捨てがたいし、60年代、アメリカのビートルズとしてデビューしたニッカボッカーズにも一枚噛んでいる(『LIES』はブリティッシュ・ビートのファンにも聴いてほしい作!)。今こそジェリー・フラー再評価を。