いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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[NEW!!]評論家・映画監督の切通理作さんが店主を務める阿佐ヶ谷・ネオ書房の読書会を開催します。
哲学を学び直したい人のために ネオ書房【倫理教師・石浦昌之ライブ読書会】 12月20日(日) 18時半開場 19時開演 高校倫理1年間の授業をまとめた新刊『哲学するタネ 西洋思想編①』(明月堂書店)から、西洋哲学の祖、ソクラテスを取り上げます。 内容 ◆ フィロソフィア(愛知)とは? ◆「無知の知―汝自身を知れ」 ◆問答法はディアロゴス(対話)の実践 ◆「徳」とは何か? ◆プシュケー(魂)への配慮 ◆善く生きることとは? 入場料1200円 予約1000円  予約kirira@nifty.com
[NEW!!]『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】が2020年10月20日に2冊同時刊行!!。
『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】2020年10月20日発売
●石浦昌之著
●定価:西洋思想編1 本体2000円+税(A5判 330頁)(明月堂書店)
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●西洋思想編2 本体1800円+税(A5判 300頁)(明月堂書店)
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[NEW!!]2020年7月31日発売『URCレコード読本』(シンコー・ミュージック・ムック)に寄稿しました(後世に残したいURCの50曲 なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」・加川良「教訓1」・赤い鳥「竹田の子守歌」、コラム「高田渡~永遠の「仕事さがし」」)。
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ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』(2020年6月26日発売)、リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。
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11月15日発売のレコードコレクターズ12月号に加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(明月堂書店)の書評が載りました。
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編集・ライターを担当した加奈崎芳太郎著『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(エルシーブイFM「加奈崎芳太郎のDIG IT!!」書籍化)が2019年8月に発売されました。
●加奈崎芳太郎著・桑畑恒一郎写真
●定価:本体3000円+税
●A5判(上製)416頁(明月堂書店)
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【メディア掲載】
『毎日新聞』2019年10月3日掲載 「元「古井戸」加奈崎芳太郎さんが本出版 音楽活動50周年の集大成」
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『長野日報』2019年9月25日掲載 「音楽文化で伝える戦後 パーソナリティのFM番組まとめ 加奈崎さん書籍刊行」
極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。
『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年10月10日発売
●石浦昌之著
●定価:本体2500円+税
●A5判(並製)384頁(明月堂書店)
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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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【ブックガイド掲載】
斎藤哲也『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』(2020年、NHK出版新書)

 James Taylor / Before This World ( Concord /2015 )

markrock2015-06-24



70年代のシンガー・ソングライター・ファンにとっては、大物のリリースが相次いでいる感もある。JDサウザージェイムス・テイラー、そして2002年の日本公演が書き下ろし新作を制作する活力になったというまさかのエリック・カズ。リンダ・ロンシュタットなんていう縦糸でも括れる三人だけれど、そこにジミー・ウェッブの”Adios”のカバーでコーラス・アレンジを担当したという縁でブライアン・ウィルソンの新作『No Pier Pressure』を加えてもいいかな。個人的にはこれらは久々に日本盤CDを買った新作でもあった。旧作LPは相変わらず増え続けているし、新作もLPずくしだったもので。



ジェイムスの新作はそれにしても13年ぶりなんですか。オリジナル・アルバムだと『October Road』以来。ずいぶん隔世の感がある。時代も変わり、音楽産業を巡る状況も激変。業界は明らかに縮小し、YouTubeや定額サービスで音楽を聴くのが主流になった。さらにCDはCDの価値を維持するべく、昔だったらブートまがいとも言えるライブ盤だって堂々とリリースされるようになった。権利の切れた旧作の愛のない再発や、オリジナル・アルバムの安価すぎる5枚〜10枚パッケージに至ってはもう完全に食傷気味なくらいだ。JTレベルだと、コーラス参加作なども含めて、それこそ必死に1枚1枚集めて聴き入ったものだけれど、この13年でそれもやめてしまったな。さらにアメリカという国の置かれている状況も大分変わってしまった。



そんな風にいろいろ思いながら1曲目”Today Today Today”を聴いたら、なんだか久しぶりに安心したというか…慢性的な不安が消えたというか。



「なんとかぼくは死なずにすんだ 流れに乗ろうとしていた頃とおんなじ気持ちでいるんだ プライドを初めて売ったあの時と…」



「前進あるのみ ぼくの心は恐れるものなどなく自由だ ここにぼくの旗を立てよう トゥデイ トゥデイ トゥデイ…」



今日の現実世界やアメリカの時代状況の中で、67才のジェイムス・テイラーからこんなに前向きなメッセージが飛び出してくるとは思いもよらなかったものだから、何だかじーんと来るものがあった。



さらにタイトル曲”Before This World”(スティング、ヨーヨー・マが参加)は、キリスト教的な天地創造以前の世界(before this world)を想像したうえで、現実を乗り越えんとする祈りの歌であるように聞こえた。



「行く末がどうなるか 誰が想像できようか (迷える)子羊よ 気にすることはない」



「世界は古くなり いつまでも続かない われわれの喜びの取り分は 過去の一瞬にあるんだ」



様々な音楽批評家たちが、自分にとってのあるべき音楽を命がけで語る。それは悪いことではない。私の考える一流の音楽家の条件はというと、「いま」「ここ」にある「時代」というものを詩や音で真摯に描くことができる、ということだ。もっとも小説家だろうが学者だろうがそれは変わらない。大体突き詰めれば考えていることは同じだと思うから。そんな意味でもジェイムスは一級のソングライターなのだ、という思いを改めて強くした。



90年代の『Hourglass』に始まる、チェリスト、ヨー・ヨー・マとの共演はアパラチアン・ジャーニーのシリーズで聴いた頃まではフォークとクラシックの共演、という風にしか聴こえなかったけれど、よく考えてみるとフィドルの入ったカントリー・ミュージックのような郷愁を感じるアメリカーナの響きだし、ジェイムスも自身の音楽との相性の良さを感じていたのだろう。本作にもスティーヴ・ガッドやマイケル・ランドウ、ジミー・ジョンソンといった旧来の常連に加えて、フィドルアンドレア・ゾンがバンドに入っている。そんなわけで、現代のカントリー・ミュージックに近い音作りだと思う楽曲もあったり。ジェイムスの声は年齢のせいかハリがなくなって少しロウになったかな、と思った瞬間もあったけれど、聴き進めていけば不思議に昔と変わらない。楽曲も地味なようで、彼がこの作品を今ここで世に問うた理由がよくわかる。67才で枯れた創作意欲を蘇らせるには腰を据える必要があったのだろう。クリスマス・アルバムに単独ライブ盤(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20080115)、カバー集(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20081004)にキャロル・キングとの共演盤(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100524)と続いた彼がわざわざ新しい曲を作るために家族と離れてしばし環境を変えたという気持ちも良くわかった。

多くのアメリカ人にとっての”Far Afghanistan(遠いアフガニスタン)”は、日本人が中国や韓国を心理的に遠く思う気持ちと一緒だろうと思ったりもした(60〜70年代に活躍したアメリカのソングライターの多くがリベラルの立場からイラク戦争を批判したこともあったけれど、ムスリムを理解しようとしない状況は余りにも変わっていない)。そんな少々政治的なテーマも含めて、ジェイムスのアコギを目立たせたミックスといい、フォークの色彩の強いアルバムだと思えてきた。ボストン・レッドソックス賛歌”Angels Of Fenway”もフォーク的な語り物だったし、ラストのスコットランド民謡”Wild Mountain Thyme”(キャロライン、ヘンリーという妻・子の家族共演)もアメリカの移民のルーツを感じさせる意味でも象徴的な楽曲だった。さらに日本盤ボーナスには1999年のアウトテイクでウディ・ガスリーの”Pretty Boy Floyd”、ランブリン・ジャック・エリオットの十八番だった”Diamond Joe”を歌っていたり。(ちなみにもう1つのボーナス曲”I Can’t Help It (If I’m Still In Love With You)”はハンク・ウィリアムスのカバーで旧友ダニー・クーチとジェイムスが二人で演奏した2003年のアウトテイク。)先日今更ながら60年代初頭のグリニッジ・ビレッジを舞台にした映画インサイド・ルーウィン・デイヴィス』(モデルはデイヴ・ヴァン・ロンク!)を観たのだけれど、そんな気分とも個人的には繋がった。

(追記) ジェイムス・テイラーメーリングリストの記事を見ていたら、ビルボード初登場1位を記録したとのこと。11枚のアルバムがトップ10入りしている彼のキャリアにとってに意外にも初めてのアルバム・チャート1位であるらしい。