/ Twistin’ The Night Away ( Warner / 2012 )
最近久しぶりに買って読んでみた小説『ダウンタウン』(小路幸也)。70年代後半のいち高校生とそれを取り巻く人々の日常が、旭川の喫茶店「ぶろっく」(実在するらしい)を中心に展開される。実在する「場」というものが希薄になりつつある昨今だから、いくぶんかノスタルジックに読まれるだろう小説。70年代の音楽が小ネタのように織り込まれるのがいい。もちろんタイトルはシュガーベイブなわけで、それを汲んだ解説のタイトル「いつも通り」もいい。しかし読んで思ったのは、人はネット上の仮想連帯だけで満足できるのか。その答えはどうもNO、というのが最近感じる結論だ。
さて、レコードやCDはどんどん増えつつあるが、目玉が飛び出たのはコレかな。トータス松本のサム・クック・アルバム全曲カバー盤。サンプル盤で半信半疑聴いたけれど、コレは買わなくちゃ、という仕上がり。レコードに針を落とす音から始まって、鳴り始めた音は信じられないくらいサム・クックのレコードの音!しかも、トータスの声に聴き慣れた耳には、はじめの30秒はトータスが歌っているように聴こえたんだけれど…途中からはホンモノと区別が付かなくなった。伸びのある特徴のある節回しをいくら好きだからってココまで似せられますか?っていう。演奏するバンドやエンジニア、そして”パロジャケ”なジャケット含めたトータルな仕上がりは参りましたの一言しか出ない。
元々3.11前にリリースの予定だったそうで。CD化が遅れてレアだったサム・クックのオリジナルLPを「だったらおれがCDにしてやる!」ってことで始まったプロジェクトらしいけど、これがなんの巡り合わせか知らないが、今年になってサムのRCA盤が一斉にCD化されることになり。オリジナルLP『Twistin’ The Night Away』も晴れてCDで簡単に聴けるようになったわけだ。
コレを機に、サムの音楽が多くの人に聴かれることを願う。トータス氏も同じ気持ちのはず。ちなみに私はRCAの再発は『RCA Albums Collection 』で入手。輸入物なら8枚で2500円、って安すぎでしょう。初期の数枚は昨年出た激安ボックス『Eight Classic Albums』で押さえておきたい。なんだか最近のCDはダウンロードされるくらいなら安く売ったろ、的な叩き売りが目立つ。有り難みが無くなるのが一番コワイから、そう言う時は昔から良く聴いていたabckoのベスト盤で”A Change Is Gonna Come”を聴く。そうそう、ゴスペル時代の3枚組ボックス『Sam Cooke with Soul Stirrers』も一通り聴いた後に聴くと浸みる。