/ 旭日東天 ( PonyCanyon / 2009 )
先週の水曜日あたりだったかな。元ふきのとうの山木康世のライブに行ってきた。高円寺の老舗ライブハウス、Showboat。1974年に”白い冬”でデビューした北海道出身のフォーク・デュオ「ふきのとう」。4人組だった時代のアルフィーと同期かな。アルフィーは”夏しぐれ”がデビュー曲だったけれど、「夏」の方はヒットしなかった。
細坪基佳のハイトーンと山木康世の卓越した楽曲・ハーモニーはエヴァーグリーンの色合い。”風来坊”、”ひとりの冬なら来るな”、”思いで通り雨”、”柿の実色した水曜日”、”春雷”と言った楽曲は、人の純粋さや自然の美しさにハッとさせられる独特の世界観を持っており、いつでも清々しい気分にさせてくれる。
さて解散後はオフコースと同様、再結成することもなく、それぞれがソロでのキャリアを重ねている。
実は山木さんのライブ、今回が2度目でありまして、1度目は1994年。つまり中学3年生の時でありました。当時住んでいた東村山市の市民会館(富士見町)に来てくれた。チケット代はたった1000円だったはず。そこで、”風来坊”や”五色のテープ”、”柿の実色した水曜日”、それに海援隊に提供した”思えば遠くへ来たもんだ”なんかを聴いたのであった。アクースティック・ギターとハーモニカに味わい深い低音が載る、これぞフォーク・シンガーと思えるステージだったのをよく覚えている。それ以来、『道』とか、石川鷹彦と再びがっぷり四つに組んだ『静かに水の流れが岸をけずる』(はっきり言って名盤!!)、それに1999年のライブを収めた『Concert Tour ’99 〜幸せは青空の彼方から』をどれほど聴き込んだことか。
16年ぶりの山木さん、見た目も、ステージも、全く変わっていないんだから、感動した。オープン・チューニングのギターと、ノーマル・チューニングのギターを持ち替えながら誠実なステージを展開して。地方公演で旧い楽曲をやっていた反動か、新曲中心のステージだったのだけれど、スローにアレンジし直された”風来坊”も聴けたし。終演後、「(16年前と)全く変わってなかったでしょ」とおっしゃっていたけれど、琵琶法師の世界をギター1本で表現した”弁慶と義経”なんて完全に新境地だったし、ルーツとなったカントリー(”テネシー・ワルツ”)が聴けたのも貴重だった。派手な世界に踊らされず、地道に、マイペースに歌い続けておられる山木さんのようなフォーク歌手はこれからも追い続けていきたいものだ。
さて、今回紹介するのは2009年の新曲&セルフカバー集『旭日東天』。”春雷”、”白い冬”、”涙のらぶれたあ”、”やさしさとして想い出として”なんかもスタジオ録音で入っているけれど、新曲の”嶺上開花(リンシャンカイホー)”が山木さんらしいとにかく良い曲!サイトから購入できる2枚組『嶺上開花』(以前ブログで紹介したが→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20090307)のタイトル曲でもあったものだ。さらに、サイトでは『自己流plus』(コレも良かった!)やデモテープ集なんかも購入できて、ファンには嬉しいリリース・ラッシュが近年続いている。
そうそう、ライブの後購入したのだけれど、エッセイ集『此此然然(コレコレシカジカ)』も彼の人柄が出ていて面白かった。一緒に2枚のアルバムを作った石川鷹彦や、イルカとの対談、名曲群にちなんだショート・エッセイを収録し、筋の通った彼のポリシーやあたたかさに触れられる好著と言えよう。